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「もう、割と本気のお付き合いですよね……」
黙り込む私を尻目に、彼女が一人で淡々と喋り続ける。
「……まだ、永瀬さんが先生との関係にハマってなかった頃に、
それとなく、私の方から忠告をしておいてあげたはずだったんですけど……」
その言い方に、さっき思い出したばかりの彼女の言葉が再び頭をよぎった。
『笹井さんなんかより、ずっとハマりやすそう……』
あれが、忠告って……どうして、と思った。
「何を…知っていて……」
話の真意が全くつかめなくて、声を詰まらせると、
「いろいろとですね……。……だからもういい加減に、あの先生とのお付き合いはやめられた方がいいんじゃないですか?」
彼女は、またしても忠告とも取れるような話し方をして、さもすっきりしたとばかりにコップの水をゴクゴクと飲んだ。
普段おとなしいはずの近野さんが、なぜだか妙に恐くも思えてくる。
「……言ったでしょう? 『おとなしくしている分だけ、いろんなところを見てる』んだって……」
彼女に告げられて、再びいつかのランチタイムでのやり取りが蘇ると、ぞくりと鳥肌が立つようだった。
「どうして…そんな探るような真似を……」
やっと、それだけを口に出した私に、
「どうして……? ……どうしてなのかは、そのうちわかりますから……」
まるで含みを残すようにも言って、
「だから、早い内にも別れた方がいいんじゃないですか? これ以上、関係を詮索されたくなければ……」
「詮索って……何を、探ろうとしてるの? 近野さん…あなた…」
私の問いかけには何も答えず、
「永瀬さん?」
と、ふっと呼びかけて、目の前の箸を何事もなかったかのように取り上げると、
「……せっかくのランチが冷めるので、早く食べましょう?」
また彼女は、微かに唇の両端をを引き上げ笑って見せた……。