ナムサノ
124×230
中断ifです。借金は返せてます。
2部構成で今回は前編です。
おそらく次回R18になります。
ゲームを中断して帰った後、サノスとは割とすぐ再会した。どうやらサノスはゲームから帰った後も薬を頻繁にやっていたらしく、俺も帰ってから仕事を変えてなかったので、俺が薬を届けた先に普通に居たのだ。
実にさっぱりとした再会だった。
普段届けているところよりもそこは厳重だった。看板も無く、目立たない階段を下り、サングラスをかけた男に身分を確認されて、やっとのことで入れた。
低俗で、下品で、煙っぽく、キラキラとカラフルライトが輝き、男女問わず爆音で流される音楽にノって踊っていた。踊っているように見えて、よく見ると中々に過激なプレイをしている人もいた。
一見クラブのような場所だが、これを見たあとのクラブは、さぞ上品に見えることだろう。
人混みをかき分けて奥へ進むとVIPルームのような場所があった。
なかなかに豪華な扉なのでわかりやすい。
……ここだ。
再度身分確認を受けたあと扉を開けると、短い廊下の奥にまた扉があった。すりガラスになっているが、暗いこともあってか中の様子はあまり見えない。
廊下を歩いてノックをすると、扉を開けて誰かがでてきた。
こういった場所にいる人間に顔を覚えられてもいい事がないので、下を向いて荷物を渡す。
124「こちらです……あ」
俺の渡すブツを受け取ろうとする手に見覚えがあった。
顔を上げると案の定……
230「thank you. 」
……サノス。
あまりにも早い再会に口を開けている俺と比べて、そいつは全く動じていなかった。
……目、合ったよな?
まさか忘れてるのか、なんて考えもよぎったが、それは流石にないだろうとすぐに撤回した。
124「…あの」
230「……なんだ?」
サノスは俺の目をじっと見つめて、不思議そうに顔を歪める。
……気づいてないのか?髪を切った訳でもないのに。
まさか本当に?
イカれた人混みをかき分けてきたせいか、この気まずい空気のせいか、特別暑い訳でもないのに俺の頬に汗が伝った。
ああ、なんでこんな緊張しなきゃならないんだ
230「……あ?ナムスか?」
124「!はい、お元気そうで」
特段サノスは表情を変えず歪めたままで、再会を喜んでいる様子はなかった。
もっとこう、、
Heyナムス!How have you been? みたいな感じかと思ったんだが……
別に再会を喜んで欲しい訳ではないが、顔を歪められるのもそれはそれでスッキリしない。
相変わらず間違えている名前にも、もう触れなかった。というより、触れることができなかった。
イカゲーム中に話した彼の、親しげでチョロそうな感じが無かったためツッコミずらかったのだ。
薬が切れてるのだろうか?
230「お前も元気そうだな。Would you like to eat this?分けてやろうか。それとも今から一緒にやるか?」
歪めた顔を元に戻しスンとした表情で、箱の中からラムネ状の薬が入った透明な袋をひらひらと俺に見せる。
一緒にやるか?というのは、サノスの後ろに見える扉の中にいるであろうイカれたヤク中共と一緒に薬をやらないか?という意味だろうか。
……やるわけが無い。
何度も言うが、あーいうヤツらに顔を覚えられて良かった試しは無い。
124「いや、遠慮しときます」
230「そうか。おつかれ」
その後表情を変えぬままさっさと部屋に戻ってしまった。
あっさりと閉められた扉に、ポツンと廊下に1人残された俺は、好きな女に振られた男のように映っていたかもしれない___。
その後は、よく配達を頼まれるようになった。
ガサガサ
230「おぉ、これ最新のヤツ?」
124「そうすね」
俺が渡した箱を即座に俺の目の前で開けて目を輝かせる姿は悪くない。
ここによく届けるようになって気づいたことがある。
230「Goodboy。サンキュ」
124「……うす」
サノスはかなり容姿がいい。
さすが自信満々に女をナンパするだけある。彼は礼を言う時偶に今回のようにウインクをするが、なかなか様になっている。
124「あの」
バタン
俺には一瞥もくれず、割と大きな音を立てて扉が閉められ、少しイラつく。当人は新作ドラッグに夢中で扉の音など気にもしてないのだろう。もちろん、俺の静止の声も気にもとめていないだろう。
帰路に着くと真っ先にソファへと歩みを進め、そのまま体を沈める。
124「……はぁ」
もしかしたら、ここまで読んで違和感を持った人もいるかもしれないが、その通りだ。俺はサノスを嫌いじゃない。……バレてると思ってもうはっきり言うが、アイツのことが好きだ。
厳密に言うと好き未満ではあるが_。
自己分析できるところは俺の長所だと思っていたが、今回に至っては短所になってしまったらしい。あんな奴への好意なんて気づかない方が明らか幸せだっただろうに。
……どうせ、帰ってきてからこの3,4ヶ月で何度も女を抱いてるだろうし。
ラッパーとしてもかなり順調のようだ。
再会してから早3ヶ月近く経つが俺たちの関係はさほど変化していない。そもそもまだ4回ほどしか会っていない。
ゲーム内にいた時はお互い、元々親しい人間はいなかったし、薬をやってるのもお互いだけだった。……YouTuberに投資詐欺にあったのも。
しかし今は違う。帰ってからはお互い元々の友人と仲良くしているし、薬仲間だってサノスには大勢いるだろう。
俺はただの顔見知りの配達員。
…むかつく。
あれこれ考えていると次第にイライラが積もってきた。
そもそもなんであんなよそよそしいんだ?月に1、2回しか合わないんだからもっと長話したっていいだろう。いや、わかってる。中で待っている友達がいるし、そもそもただの男の配達員とそんなダラダラ喋る方がおかしい。むしろ彼はフレンドリーな方だ。
_俺から誘えばいいのか?
よくよく考えてみれば彼は最初再会した時に誘ってくれていた。それ以来一度も誘いは無いが、それは俺が断ったからでは無いのか?
ゲーム内にいた時だって俺とサノスの繋がりは投資詐欺と薬だけだった。
借金はもう返したし、投資詐欺は解決したも同然。その上、薬の誘いを断ってしまったら、彼からすれば俺との繋がりはもう無くなったかのように見えているのかもしれない。
……次に注文があって、もしまた受取人がサノスだったら、その時は誘ってみよう。
ブツを渡す前に声を掛けよう。扉を閉められないように。
薬以外のものを共有するところから始めよう。
まずは、そうだな……、飲みに誘ってみるか。
コメント
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全てにおいてうまいです‼️凄すぎです‼️ 他のアプリ(?)でも見ました()テ
再開すごく好きすぎる♡♡
ヤバいこんな天才で神な作品に出会えるなんて私は前世凄くいい事をしたに違いない………