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「求めるって……?」
久次は漣を見下ろしながら少しだけ目を見開いた。
俺が欲しいのは……。
退屈な授業とか。
ダチと嵌め外して夜遅くなって母親に叱られるとか。
かわいい女子から、告白したりされたり?
好きな人とキスして。
好きな人とセックスして。
毎日幸せ!みたいな。
そんな、高校生らしい幸せを……。
求めてはいけないのか……。
「……またハグか?」
久次は少し笑いながら両手を開いた。
「…………」
漣はその顔を見つめた。
そうか。
ハグくらいなら求めてもいいんだ。
好きな人との抱擁。
それくらいなら、神様は俺にくれるんだ。
どうせ俺は……。
母親を捨てられない。
たとえそれが、息子が売春してるのに止めようとしなかったズルい母親でも。
息子とろくに話そうともせずに、よくも知らない男に養子縁組を許してしまうような、弱い母親でも。
弟だって、見捨てることはできない。
何も知らずに毎日、それこそ漣が欲しくて欲しくてしょうがない高校生活を謳歌しているだろう弟だけど。
それなら………。
せめて、ハグだけ。
「うん。お願い……」
漣は久次の大きな胸の中にトンと身体を預けた。