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前に抱きしめてもらったときには、大人のお洒落な香りがした久次の首元は、今日あんなに走ってきてくれたからか、汗と雄の匂いがした。
その事実に愛おしさがこみあげてきて、漣は久次のワイシャツをグッと握った。
「お前って華奢だよな……。ちゃんと飯食ってんのか?」
久次が笑う。
それには答えられずに、もっと久次の匂いを身体に取り込もうと漣は目を瞑り大きく息を吸った。
「ふっ……」
その動作に久次は笑いつつ、さらに漣を抱き寄せてくれる。
その大きな手が、漣の後頭部を撫で、その後グッと自分に引き寄せた。
この間よりも強い抱擁。
久次の身体の中に溶けていけるような……。
「――――!!」
急にその腕に力が入った。
頭を撫でていた掌に急に意思が宿ると、指先でその形を確かめるように後頭部を触る。
そのままぐいと寄せられ、久次の頬が漣の頬に摺り寄せられる。
「せんせ……?」
「頭にたん瘤がある」
久次は低い声で言った。
「見た目じゃわかりにくかったが、やはり頬も腫れてて熱い」
「………あ……」
そこでやっと漣を離すと、久次は漣の両目を睨みながら言った。