異能遊園地を後にした三寳たちは、夜の横浜を歩いていた。余韻を感じさせるように、空気は重く、どこか静けさが漂っている。
ウラジーミルが前を歩きながら、しっぽをゆっくりと振った。
「にゃー、ここが横浜異能街……昔から怪しい連中の巣窟だぜ。」
アーサーは紅茶缶を取り出し、優雅に歩きながら言った。
「そうですね。どこもかしこも……異能を持つ輩が集まっているようです。」
三寳は不機嫌そうに腕を組んだ。
「面倒な連中ばっかりってわけか。ま、私がまとめて喰ってやるけどな。」
アーサーがやれやれと肩をすくめる。
「お嬢さん適度に摂取したほうが健康にいいですよ。」
ウラジーミルがくるりと振り返り、三寳の顔をじっと見つめる。
「……おい、三寳。お前、最近異能を食い過ぎじゃないか?」
「……は?」
「いや、何か……気配が変だ。」
ウラジーミルが鋭い目で彼女の額を見る。そこには、わずかに第三の口がうごめいていた。
「……別に平気だよ。」
三寳は軽く頭を撫でるが、どこか表情が強張っていた。
そのとき、路地の暗闇から黒い影がゆらりと現れる。
「……よぉ、珍しい客人が来たな。」
現れたのは、真紅のスーツを身に纏った男だった。鋭い目と、にやりと笑った口元が不気味に浮かぶ。
「“喰らい屋”の三寳櫻……異能街では有名だぜ。」
アーサーが静かにティーカップを取り出し、淡々とした口調で応じる。
「おや、我々をご存じとは光栄ですね。」
男はポケットからタバコを取り出し、火をつけた。
「ここは異能者の楽園……だけどな、お前みたいな“異能食い”は歓迎されねぇんだよ。」
三寳はふっと笑った。
「……で? どうするつもり?」
男の周囲に、無数の異能者たちが現れる。彼らの目は狂気に満ち、様々な異能を発動させ始めた。
「おい、三寳……これ、相当ヤバい連中だぞ……。」
ウラジーミルの毛が逆立つ。
しかし、三寳はゆっくりと額に手を当て、第三の口をパクッと開く。
「……異能の味見、させてもらおうか。」
その瞬間――
ズズズ……ッ!!
地面が震え、異能街全体に不穏な空気が満ちる。
アーサーが微笑む。
「さて……紅茶を楽しむ余裕はなさそうですね。」
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