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「ご主人、美味しいニャ?」
ケットは器用にスプーンを使って、ムツキの口に料理を運ぶ。
「あぁ。すごく美味しい。デザートもみんなで取ってきたからか、新鮮な物ばかりで美味しいな」
「まさしく御馳走ニャ。本当は少し寝かした方が熟成するものもあったニャ。でも、しょうがニャいニャ」
ケットはムツキから美味しいという言葉を聞いて、本当に嬉しそうに笑う。そして、もっと美味しいものも提供できるという自負があった。
「気持ち的には充分だよ。ありがとうな」
「いつも労いの言葉、ありがたいニャ。みんニャも喜んでいるニャ」
いつの間にか、周りには猫や犬、うさぎなどが集まり始める。全員が集まると200匹弱はいるのではないかという数で、さすがのムツキもいつものことながら圧倒される。
「集まってくれてありがとう。いつもありがとう。なんかみんなにしてあげられればいいんだけどな」
「いつも撫でてもらったり、優しくしてもらったりだから、こちらこそ充分ニャ」
ケットは代表してムツキに改めて礼を言う。周りの妖精たちも同意しているのか、首を振ったり、尻尾を振ったりしている。
「そうか。ありがとう」
「うにゃー」
ケットは急に撫でられて甘い声を出す。とても気持ち良さそうな声に周りの妖精たちは反応する。
「にゃー! にゃー!」
「わん! わわん!」
「ぶぅ!」
「どうした?」
「みんニャ、自分も撫でてほしいって言っているニャ」
ケットは周りの声を翻訳し、ムツキに伝える。ムツキはしばし考えた後、低い姿勢で構える。
「よーし! みんなかかってこい!」
瞬間、妖精たちの目の色が変わる。我先へとムツキの下へ駆けていく。ケットは咄嗟にいろいろと物の載っているテーブルをズラす。
「ちょ、順番ニャ! 本当にみんニャはダメニャ! いっぺんにはご主人でも無理ニャ」
「どわーっ!」
ムツキは小さい妖精たちが潰されてしまわないように注意しながら、全員を受け止めきれるわけもないので床に倒れ込んだ。犬の妖精の中には嬉しさのあまり舌で彼の顔をベロベロと舐め始めるものまで現れた。彼はべとべとになりならも嬉しそうな顔を隠さない。
「ご主人、大丈夫かニャ?」
「はっはっはっは。大丈夫だ!」
手のひらに頭を寄せてくるものもいれば、身体の上に丸くなって寝転がるものまで、それぞれがいろいろな甘え方をしてくる。
「にゃー!」
「みんないつもありがとうな」
「わんわん!」
「ぷぅ」
全員一度には無理と気付いてからは、順番に思い思いの愛情表現をしたり、逆に愛情表現を要求したりする。ムツキは終始優しく綺麗な笑顔で皆を見つめる。
「俺は幸せ者だな。こんなに好かれているなんて」
「マイロード。幸せは幸せを感じる者のところにのみ現れる、ですよ」
アルはツノの根元周りを撫でてもらって、ご機嫌な状態でムツキに話しかける。
「どういうことだ?」
「幸せというものはいろいろなところにあるのですが、それを感じられる者にしか幸せは姿を見せられないということです。幸せはその人の在り方次第ということですね。幸せを受け入れる覚悟のない人の前には姿さえ現せないわけです」
「そういうものか」
ムツキはアルの言葉を噛みしめて、幸せを感じ続けられる人でありたいと思った。幸せを当然と思わないように。
「主様は幸せか?」
「もちろん」
次はクーがムツキに寄り添ってきた。その大きな巨体に柔らかい長毛は肌触りや抱き心地でトップクラスだ。
「ならば、オレたちも幸せだ。幸せは誰かと共にあるものだ」
「そう言ってくれると嬉しいよ」
ムツキはクーを優しく撫でながら、皆と幸せを分かち合っていきたいと心から願った。
「みんな、どいて! 危ない!」
ムツキと妖精たちが微笑ましい状況にある中、突然、ユウの大声が彼らに向けて放たれた。