私は山田優花スーパーでアルバイトをしているただのアラサーだ。
今日はやけに人が多いな…
1人のお客様が商品の棚を蹴って騒いでいるのが見えた。
「お客様!他のお客様のご迷惑になりますのでお辞め下さい!」
本当に面倒臭い。
まぁいつもの事だし…
この町はとにかく治安が悪い。
どこで働いても不良やスロットで負けたであろう人達が店を荒らしに来るのは当たり前、とにかく有り得ない程に治安が悪い。
引っ越したいな…
私には特に欲しい物なんかがなくて、お金を使うと言えば食費とかそんなものだった。 だから、引っ越しくらいすぐに出来る程のお金は十分にあった。
でも、何故かこの町から離れようと強く思えなかった。
そりゃあ産まれた時から住んでいるし、馴染みのある風景だから…でも、何か忘れている気がする…
忘れる程しょうもない物なんだろうな…
もう無理に思い出そうとするのはやめよう。
「そろそろ帰るか…」
気付けばもう23時を過ぎていた。
都会でも田舎でもない中途半端な町の薄暗い裏路地を通って帰る。
「流石に今日は居すぎた…」
私は急ぎ足で家へ向かった。
普段通らない道だからか、少し緊張が走る。
そんな時、私は小さな楽器屋を見つけた。ドアの横の大きな窓から沢山の楽器がこちらを見ていた。
「ギター…」
そういえば昔、音楽にハマってたっけ…
「誰かとギター弾いてた気が………誰だっけ…?」
分かりそうで分からないのがとてもモヤモヤする…
でも今考えたって仕方がない。
この事は忘れよう。
モヤモヤしつつも、私は家へとまた急ぎ足でその場を後にした。
コメント
1件