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波乱のテスト期間が終わりを告げた。
今、俺は何をしているかというと、屋上で正座をさせられていた。
理由はテスト結果が貼り出された際の、田沢先生の行動によるものだ。あれは先生が勝手にやったことであって、俺は被害者だと思うのだが。
「いい、ハルくん!?絶対に近づいちゃダメだよ!?」
「香織の言う通りだ!!絶対に危ないって、あの先生!!」
「い、いや、お前ら担任だぞ?」
「「それでも!!」」
いやいや、流石に担任に近づかないって不可能に近いのでは?俺は無理難題を課せられているように感じたが、早く解放されるためには、頷く他ない。
「わ、わかったよ。気をつける」
「「ならよし」」
さーて、打ち上げはどこ行こうか?と2人は、さっきまでとは打って変わり、ニコニコしている。
女の子って、忙しい生き物なんだな。
俺はそっと立ち上がると、2人の後をついて行くことにした。また、変なことして正座させられないよう、俺はこの日ずっとおとなしくしていた。
ーーーーーーーーーー
さて、今日は何を着て行こうかな?
クローゼットの中を漁り、服をベッドへ並べて考えていた。
悩んだ末に、無難に白Tにジャケットを羽織ることにした。どうせ向こうで着替えることになるなら、私服はそこまで考えなくて大丈夫だろう。
今日は、恵美さんが家まで来てくれるらしいので、身支度を整えて待つことにした。
一通りの準備を終えると、ちょうど我が家のチャイムが鳴った。お、来たかな?
「はーい」
ガチャッ。
「おはよう、晴翔くん。ご家族は居ないのかな?」
「おはようございます、恵美さん。今日はもう仕事に行ってるので居ませんよ」
「そっか、ご挨拶したかったけど、また今度だね」
さっそく行こうか、と恵美さんに誘導され、車に乗り込んだ。
俺の自宅から、今回の撮影スタジオまで30分程だった。
実際に来てみると、かなりデカい建物で、スタジオ兼ファッションブランドの会社になっているようだ。
地下に入ると、高級車がずらりと並んでいた。
車から降りると、恵美さんの後を追い、建物の中に入る。職員用のエレベーターからスタジオのある5階へ移動する。
「こっち来て、ここが晴翔くんの控え室になるから、ここで少し待っててくれる?飲み物とか勝手に飲んで良いからね」
そう言うと、恵美さんは控え室から出て行った。
案内された部屋には『HARU様控え室』と書かれていた。
HARUという名前は、ツイッターのアカウントを作る時に、恵美さんにつけてもらった名前だ。本名だとなにかと大変になりそうだからと。
それにしても、控え室ってテレビとかでたまに見るけど、本当にこうなってるのか。8畳間ほどの部屋に、メイクをする為のスペースに、ソファ、テーブル。俺のイメージ通りの控え室だった。
テーブルの上には、水とお茶のペットボトルが数本置かれており、俺はお茶を飲むことにした。
「それにしても暇だなぁ」
俺は携帯を取り出し、ツイッターを開いた。
俺のツイッターのフォロワーはいつの間にか1万人を超えており、よくわからないつぶやきが並んでいる。
つい先日、香織に相談したところ、特に解決することはなく、香織と綾乃のアカウントをフォローさせられた。
暇だからなんかつぶやくかな。
俺は控え室から出ると、入口に貼ってあった、『HARU様控え室』の写真を撮った。
その写真と共に、『これから撮影です』と一言付け足して投稿した。
その後、やるとこもなかったので、控え室の中を色々見て回っていた。すると、5分程経つとドアがノックされた。
コンッ、コンッ。
「晴翔くん、お待たせ。じゃあ挨拶行くから来てくれる」
「はい」
俺は恵美さんの後を追って、スタジオへ向かう。
「そういえば、今日のこと投稿してくれたんだね?ありがとうね」
「あ、いえ、暇だったんで。勝手に載せましたけど、よかったですか?」
「あぁ、全然大丈夫だよ。今日は色んな服を着てもらうんだけど、いくつか私の携帯で撮っておくから、それも投稿してもらっていいかな?」
「わかりました、よろしくお願いします」
一番奥の突き当たりの部屋に着くと、そこには大きな扉があった。コンサートホールとかにありそうな重たそうな扉だ。
扉を開けて入ると、そこには大きな白い背景布が天井から吊るされており、その前には立派なカメラが設置されていた。
照明の数もあり得ないほど多く、度肝を抜かれた。
さらに奥には、撮影で使う小道具や、セットが置かれていた。前回の撮影は、ショッピングモールで行ったので、あまり緊張していなかったが、ここに立っているだけで汗が湧き出てくる。
「ほら、挨拶行くよ?」
「は、はい」
カメラの近くで集まるスタッフの皆さんのところへ挨拶に行くと、喋るのをやめてこちらを振り向いた。
「おっ、君が今回のモデルさん?」
「やば、本当にイケメン!」
「安藤さん、どこで見つけてきたんですかー!?」
ここに居るスタッフは、カメラマンさんも含め皆女性の方だった。この業界はこんなもんなのだろうか?
「今回はたまたま女性だけになったけど、普段はこんなことないからね。それと、こちらが今回のカメラマンの小湊桜こみなと さくらさん」
「小湊です、よろしく」
「はい、よろしくお願いします」
小湊さんから名刺を頂き、ペコリと頭を下げた。
「こっちの2人は、前回も居たけど覚えてる?」
「はい、メイクの佐野睦さの むつみさんと、スタイリストの神戸雪かんべ ゆきさんですよね?」
「そうそう、よく覚えてたね」
「「よろしくね」」
「はい、よろしくお願いします」
他にも照明さんなど沢山のスタッフさんを紹介された。なかなか一回じゃ覚えられそうにないな。
「じゃあさっそく、メイクと衣装を合わせてみようか」
「じゃあ先にメイクしちゃおう」
俺は、佐野さんと神戸さんに連れられ、また控え室に戻る。そして、そこから着せ替え人形のようにあれもこれもと着せられたため、撮影までに時間が掛かってしまい、2人は恵美さんにめちゃくちゃ怒られていた。