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【注意】
戦争の描写ががっつり含まれますが、戦争賛美等の意図はございません。
特定の国に対する政治的意図等もございません。
空 side
もう、見たくなかった。
もう、聞きたくなかった。
昨日まで笑っていた人がどこにもいない。
さっきまで隣で一緒に飛んでいた人がどこにもいない。
大好きなはずの大空で、仲間たちがいなくなる。
僕はなんで死なない?
僕は化身だから。
ただ耐えるしかないんだ。
乗っている機体が爆発しても
体が海に投げ出されても
そのまま深く深く沈んでも
僕は死ねなかった。
「なんであいつが死んで、お前が生き残ったんだよ」
似たような言葉を何度も言われた。
泣きながら、怒りながら、諦めながら、笑いながら、
本心ではないことはわかっている。
やり場のない思いを、僕にぶつけているだけ。
兄弟の中で一番感情豊かだった僕は、その行き場のない痛みをただただ受け止めるしかなかった。
僕にできるのは、これしかなかった。
しんしんと雪が降る、ある冬の日。
突然、何かがプツリと切れた音がした。
小さく、とても弱々しい音だった。
一体、なんの音だったんだろう。
…まあ、いいか。
もう、どうでもいいや。
その日を境に、僕の中でなにかが抜け落ちた。