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その日も、湊は相変わらず冷たく、毒舌を吐いていた。けれど、そんな湊にも少しずつ変化が見えてきて、私は少し戸惑っていた。
放課後、クラスメイトと話しながら廊下を歩いていると、ふと湊の姿を見かけた。彼はいつものように一人で歩いていたが、その表情はいつもと違って少しだけやわらかく見えた。
「おい、せりな。」
また私の名前を呼ぶ湊。その声にはいつも通りの冷たさがあったけれど、目はどこか優しさを含んでいた。
「何?」
「お前、今日も大丈夫か?」
「えっ、なにが?」
私は不意に湊に聞かれて、少し驚いた。湊が心配してくれるなんて、思いもよらなかったから。
「別に、気にすることじゃないだろ。」
湊は少し顔を背けながらそう言うけれど、その目がどこか私を気にしているように感じた。
その後も湊は相変わらず私に毒舌を言ってきたり、冷たく振る舞ったりしていたけれど、なんだかその背後には小さな優しさが見え隠れしているような気がした。
**—次の日の放課後—**
今日は湊と一緒に帰ることになった。学校の帰り道、私は湊と並んで歩きながら、何気ない会話を交わしていた。湊は相変わらずの毒舌で、あまり心を開かないタイプだけれど、今日はなんだか少しだけ素直な気がする。
「せりな、お前、本当に鈍いよな。」
「鈍いって、なに?」
「だって、俺がこうやって話してる時、ちょっとは察しろよ。」
「うーん、どうしようもないじゃん。」
私がそう言うと、湊は少しだけ眉をひそめて、「だからお前は…」と、言いかけた。けれど、その後、ふっと息を吐いて、何か言いたげな顔をしていた。
その瞬間、湊が私の頭をポンッと軽く叩いた。
「何で?」
私は驚きながら、湊を見上げた。湊は少し照れくさそうに顔を背けて、口を動かす。
「お前、なんかボーっとしてるから、ちょっとだけ…」
その言葉の意味がわからなくて、私は少し考え込んだ。でも、湊の手のひらが私の頭を優しく叩いていたその感触が、何かとても温かいものに感じられた。
(湊、なんでこんなことを…?)
その瞬間、湊の顔がほんのり赤くなるのが見えた。彼が私を気にかけているのは、少しずつわかってきているけれど、どうしてこんなにも素直に接してくれるのか、私にはまだ理解できていなかった。
「湊、今のって…?」
私はそのまま湊を見上げて聞いてみた。湊は少しだけぎこちなく、肩をすくめる。
「別に、気にしなくていい。お前が鈍いから、教えてやっただけだ。」
その言葉に、私はますます湊の気持ちがわからなくなったけれど、同時に心の中でなんだか少しだけ温かさを感じた。
「ありがとう…」
私は湊の反応に照れながらも、心の中で感謝の気持ちを込めてそう言った。