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次の日も、湊とは一緒に登校して、席も隣で、放課後もなんとなく一緒に帰る流れになっていた。最初は「なんでこいつと…」って思ってたのに、今ではそれが当たり前みたいになっていて、自分でも少し驚いている。
今日の授業が終わり、私は机の上に顔を伏せながら軽くため息をついた。
「疲れた~…」
その瞬間、横から湊の声が聞こえた。
「お前、最近ため息多くね?」
私は顔を上げて湊を見る。湊は相変わらずのクールな顔で、腕を組んでこちらを見ていた。
「え?そうかな?」
「そうだよ。そんな顔してると、また余計な奴らに心配されるぞ。」
「余計な奴らって…?」
「悠斗とか。」
その名前が出た瞬間、私は一瞬固まった。悠斗は今、風邪で学校を休んでいる。確かに、悠斗はすごく優しくて、私のことを気にかけてくれるけど…。
「別に…悠斗はただの友達だし。」
そう答えた私に、湊は小さくため息をついた。
「はぁ…お前、ほんと鈍いな。」
「えっ?」
「…いや、なんでもねぇ。」
そう言いながら湊は立ち上がる。
「帰るぞ。」
「え?今日も一緒に?」
「他に誰かいるのかよ。」
「いや、別にいないけど…」
なんだかんだで、今日も湊と二人で帰ることになった。
**—帰り道—**
駅の近くの横断歩道を渡ろうとしたとき、突然、近くのトラックが左折しながら接近してきた。
「っ!」
私はびっくりして一瞬動けなかった。
でも、その瞬間——
**ぎゅっ**
背後から強い力で引き寄せられた。
「っ…!?」
次の瞬間、私は湊の腕の中にいた。しかも、しっかりと後ろから抱きしめられる形で。
「お前、危ねぇだろ。」
低く落ち着いた声が耳元で響く。
「え…?」
驚いて振り返ろうとしたけど、湊の腕が思ったより強くて、私はそのまま固まってしまった。
「トラック、見えてなかったのかよ。鈍すぎんだろ。」
「あ…」
確かに、少しボーっとしていたかもしれない。でも、それよりも今は——
湊の腕の中にいることの方が気になって、心臓がバクバクしていた。
「…ごめん。」
「別に謝る必要はねぇけど。ほんと、もう少し気をつけろよ。」
そう言いながら、湊は私をゆっくりと離した。私はそのまま俯いて、自分の心臓の音が聞こえそうなくらいドキドキしていた。
ふと湊の方を見上げると、彼の顔がほんのり赤くなっていた。
(え…湊も恥ずかしいの?)
なんだか、今までの湊の態度とは少し違って、私はますます彼のことがわからなくなった。
すると——
「…俺が守ってやるから。」
「え?」
小さな声だったけど、確かに湊はそう言った。
「お前、鈍いし、危なっかしいし。だから、俺が守ってやる。」
湊は顔を背けながら、でもどこか本気の表情でそう言った。
私はその言葉を聞いて、胸の奥がぎゅっと締め付けられるような気持ちになった。
「…湊?」
「なんでもねぇよ。ほら、行くぞ。」
そう言って歩き出す湊の後ろ姿を見ながら、私は初めて、自分の中の感情に気づき始めていた。