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無地のパーカーにジーパン、黒のショルダーバッグというなんとも無難な格好の俺に対して、優くんはモデルと見間違うほどオシャレだった。
こんな人の隣を歩くこと自体地獄なのに、久々の外は憎いくらいに快晴で、生憎の休日で都心の繁華街は相も変わらず賑わっていた。
「ねぇねぇ蓮!何から見に行く?」
「えっと…俺は、もう十分です…」
「何言ってんのw早く行くよ!ん〜まぁとりあえずなんかカフェにでも寄ってそれから…」
俺に聞くまでもなく大体の目処はたったのかスタスタと人の間を縫って歩く優くんに俺は着いて行くだけで必死だった。
「はぁ、ちょっと、ゆう、くん…はや、い…」
「え?わっ!蓮大丈夫!?ごめん、ちょっと休もうか」
そう言って今度はスピードを緩めて歩いてくれた。
近くにあったフードコートの2人席に座ってしばらく待っていると、手にカップアイスを持って帰ってきた。
「何が好きか分からなかったからとりあえずミントのぱちぱちするやつとチョコにしてきたよ!俺のはバニラとストロベリーだからこっちが良かったら交換しよっか」
差し出されたカップと優くんの手元のカップを見て迷った挙句、差し出された方を受け取った。
「ありがとう…」
「いいよ〜」
美味しそうにストロベリー味を食べる優くんを見て少し羨ましくなる。
1口欲しいなんて、言える関係ならすぐにでも貰ったのに…
と思いながら自分の方のアイスを頬張る。
口に入れた瞬間弾けるキャンディーと爽やかなミントに思わず頬を緩める。
「ふふ、蓮はほんと美味しそうに食べるね」
「そう、かな?でも、ほんとに美味しいんで!そうだ、優くんも食べる?実は、このミントとチョコの相性すっごくよくて」
スプーンにミントを半分、チョコを半分乗せて差し出す。
「はい!」
差し出したスプーンに躊躇なく優くんが食らいついたのを見て自分が今何をしたのか理解する。
あまりにも自然な流れで気が付かなかったが、今自分は関節キスをさせたのだ、無意識に。
それどころか「あーん」なんて恋人か幼い子を持つ親がするようなことを平然とやってしまった。
しばらくアイスの無くなったスプーンを空中で静止させたままぼーっとしてると優くんがいたずらっぽく笑う。
「ほんとに美味しい」
そんな風に笑うから、余計に意識してる自分だけが恥ずかしくなる。
そっとスプーンを下ろして手元に半分以上残ったアイスを眺める。
これ、どうやって食べよう…
なんやかんやあって結局は自分の中で色々理由をつけて食べきったカップを捨て、再度ショッピングに戻る。
「カフェはもういいとして…日用品は荷物になるし最後でもいっか!蓮は何か欲しいものある?」
「いや、特には…」
「そっか、じゃあ映画でも見る?今なんか流行ってるやつやってた気がするけど…」
そう言って優くんは道の途中にあるマップを確認する。
映画館はどうも最上階にあるようで、エスカレーターに乗って上に行くにつれ人が多くなる。
やっぱり人気なだけあって来場者もかなりいるようだ。
「流石に人多いね〜って蓮大丈夫?もしかして人酔いしたりするの?」
「あっ…いえ、そういう訳では…ただ」
ぼーっとしていた俺にまたもや慌てたように心配する優くん。
その言葉を否定してなんとはなしに見ていた店の方をむく。
「ただ?」
そっと映画館脇にひっそりとある小物屋さん。
人混みに紛れてキラキラ輝く宝石のようなアクセサリーが気になって仕方なかった。
それに気づいたのか流れで映画館に向かおうとする足を止め、優くんは俺の手を取った。
「映画はまた今度にしよっか、俺もあそこ気になるし」
「う、うん!」
握られた手を不自然にならないように握り返してみる。
何も反応しなかった優くんに少し安心して店に足を踏み入れた。