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東雲先生に2回?恋した理由

最終話 東雲先生に2回?恋した理由

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2022年02月16日

#ファンタジー#恋愛#年の差

それから半年後の事。

花梨の希望で俺達は修学旅行の時に訪れた神社に旅行で立ち寄っていた。

「花梨、ここ段差になってるから気を付けろよ?」

「そのくらい見えてるよ!もう、心配し過ぎ!」

俺は花梨の腰に手を添えて歩いていた。

花梨は大きくなってきたお腹をポンポンと優しく撫でる。

そう。花梨は現在妊娠六ヶ月。

妊娠中に無理はさせたくなかったけど、花梨の強い希望で無理をしない事を約束して今回の旅行が決まった。

ここの神社にかなり御利益がある事は、高校の頃に証明済だ。

あの時、花梨と付き合えるように強く願ったのを覚えている。

今回は、花梨とお腹の子の健康を願った。

今の一番の願いだ。

御参りが済むと、高校の時と同じ様に花梨はまだ真剣に手を合わせていた。

今度は何願ってるんだろうな……。

「あ……また待たせちゃった!ごめんね!本当私、高校の頃と変わってないね」

「全然いいよ、いくらでも待つよ」

「へへッ……ありがとう!また絵馬も書きたいっ」

「あぁ、書こうか」

俺は花梨と手を繋いで、社務所の方へと移動した。

「絵馬もらってくるから、ここ座ってて」

「ありがとう」

花梨を先に絵馬を書くスペースの椅子に座らせてから絵馬をもらって戻ると、花梨がケータイの画面を嬉しそうに見ていた。

「お待たせ」

「あ、龍二!見て!萌のところ3人目の男の子無事産まれたって!」

花梨は俺にスマートフォンの画面を見せた。

見ると、山田が産まれたばかりの赤ちゃんをウインクをして抱っこしている画像だ。

山田と小西も高校の頃から1度も別れる事なく、俺達よりもかなり前に結婚していて今は3児の親になっている。

山田の相変わらずのキメ顔につい笑ってしまった。

「ふっ……確か、1人目も2人目の時もこんな画像だったよな?」

「そうそう!山田相変わらずだよねぇ」

「でも、無事に産まれて良かったな」

「うんっ……あ、絵馬書こっか」

俺は花梨の隣りに座って、花梨に絵馬を差し出した。

「先どうぞ」

「ふふッ!今回は昔と反対だね?昔は龍二から書いたんだよ?」

「よく覚えてるな」

「あの時ずーっとドキドキしてたからよく覚えてるよ」

「俺もそうだったけどな」

花梨はすごい笑顔で、隠しながら絵馬に願い事を書き始めた。

書き終わると、書いた場所を手で押さえながら俺に差し出す。

「私が書いたのはまだ見ちゃダメだよ?」

「わかったよ」

俺は書く事が決まっていたので、すぐに書き終えた。

「書けた?」

「あぁ」

花梨は絵馬を手に取ると、昔と同じ場所に掛けようとした。

またあんな高いところに……

俺は花梨の手から絵馬を取って、花梨が掛けようとしているところに絵馬を掛けた。

「ごめ……ありがとう」

「ん。あー……またこのパターン」

「あ!本当だ!もう……せっかく龍二が真似しないように見せなかったのに」

“花梨の願いが叶いますように。 龍二”

“龍二のお願い事を叶えてください! 花梨”


4年後。

「 今日から、うさぎ組の先生になる東雲先生でーす!」

「よ、よろしくお願いします……」

「 やだぁ!東雲先生!元気良く挨拶しなくちゃみんなに笑われちゃいますよ!」

俺は今日から1ヶ月間だけ……また過去の世界で今度は幼稚園で保育士をやる事になってしまった。

高校の教師の方が良かったけど……仕事だから仕方ないか。

花梨と娘の 未来(ミク)に1ヶ月会えないなんて……ツラい……。

俺は休憩時間に、幼稚園の廊下で花梨と未来が写っているスマートフォンの画像を眺めて溜息をついた。

昨年から相変わらず通信は出来ないが、こういった機器を持っていけるようになっていた。

ただ、この時代はまだ携帯電話が普及していない時代なので、画像を眺める以外は出来ないけど、こうして花梨と未来の画像を眺められるだけでも前に比べたら断然良い。

花梨と未来の画像を見ていると、突然俺の足元に何かが抱き着いてきた。

「あれ?」

「だぁれ?」

今の時間は自由時間ではないはず……。

「今日からうさぎ組さんの先生になる東雲先生だよ。君は何組……」

その子の目線の高さに合わせる様にしゃがみ込んだ瞬間。

俺は、衝撃を受けた。

「 未来!?え!?何で、ここに!?」

何故自分の娘がここに!?

ここは現代か!?

「 むぅー!みくじゃないもん!」

未来にそっくりなその子はムッとした顔をしてそう言った。

ん?このムッとした顔……目の下のホクロ……まさか……?

「ご、ごめん……みくっていう名前の子とそっくりだったんだ……。お名前は?」

「花梨ねぇ、カリンっていうんだよ!」

嘘だろ……こんな偶然があるのか?

とりあえず、クラスに返さないと……

「花梨ちゃんは何組かな?」

「くま組さんー!ガオー!」

花梨は手をくまの手の様に上げて、無邪気にそう言った。

くま組は3才の年少さんクラスだ。

「くま組さんか……確か、お絵描きの時間だよね?抜け出したらダメだよ。先生と戻ろう?」

「むぅ……抱っこー」

俺は幼稚園児の花梨を抱っこして立ち上がった。

幼稚園児の花梨めちゃくちゃ愛らしい……

娘のような愛おしさに胸の奥をくすぐられる。

「花梨ちゃん、こんな所にいた!東雲先生すいませんー!」

「いえいえ」

ちょうど、くま組の先生が花梨を探しにやって来たところだった。

今から隣りの教室のうさぎ組に戻る所だったので、そのまま花梨を抱っこして連れて行ってあげることにした。

「しにょめせんせー……」

「ん?」

「しゅきー!花梨、大きくなったらしにょめせんせーのお嫁さんになるー!」

「ふふっ!うん……大きくなるの待ってるよ」

俺は花梨の頭をポンポンと撫でた。



*End*

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