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やっぱりね。 でも、先生はちゃんと自分の意見を言ってて見直した👍
「どうぞ、いらっしゃい」
玄関先で、メディアなどでよく見かけることも多い外岐子先生に出迎えられた──。
応接室に通され、華やかな生花が飾られた長テーブルへ座るよう促される。
外岐子先生は陶製のティーポットからカップに紅茶を注ぎ入れて差し出すと、しばらく探るようにも私たちを見て、
「……永瀬 智香さんだったかしら? あの葬儀の時から気になっていたのですが、一臣とはお付き合いをしていて?」
紅茶を一口飲んで、そう切り出してきた。
「ええ、私が、お付き合いをお願いしたのです」
喋ろうとする私を制して、彼が答えた。
「……あなたが? ……なぜですか?」
「なぜと言うのは?」
彼が、眉間に僅かに皺を刻んだのがわかった。
彼の問いかけに、ティーカップをカチャンとソーサーへ置き、
「なぜ、そんな取り柄もないような人と、あなたはお付き合いをしているのですかと聞いているんです」
まるで咎めるような視線を投げかける母親に、
「……どうして、そんな言い方をするんですか……」
彼がそう言い返して、ふーっとため息を吐き出した。
「あなたには、いずれ政宗の家に合う家柄のお嬢様と、お見合いをとでも考えていましたのに」
「……私は、そんなあなたの考えに、同意したつもりもありません」
彼が睨むような眼差しを向けて口にする。
「あなたの同意など、元から必要ではないんです。あなたがそうするのは、当然のことなのですから」
「当然ではないですから……」
彼が再びひと息を吐いて、低く声を落とした。
「……私に、逆らうのですか? 一臣」
お母様の言葉に、私の横でぐぅっと彼が息を呑んだのがわかった。
「先生……」
思わず呼びかけると、
「……大丈夫ですから。……あなたは、心配をしないで」
小さく口にした彼が、膝の上に置いていた私の手を片手でぎゅっと握った。
「……私は、ずっとあなたの言うことを聞いてきました。……でも、もう何も聞く気はありませんので」
そうして彼は、テーブルを挟んで座る母親の顔をじっと見据えた。