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「あなたには、私に反論する余地などありません」


紅茶を口にして、淡々と話す母親に、


「……もう、いい加減にしてください」


彼が低く言い放った。


「あなたは、そうやって、なんでも自分の思い通りにしようとして……。……そのせいで、父までも追いつめて……」


言いながら彼は、テーブルの上に出していた手を、血管が浮き出す程、固く拳に握り締めた。


「私が、いつあの人を追いつめたと言うのです。あの人には、私が必要だったはずです。私の医師としての名声が、あの人には……」


「……名声など! そんなものっ!」


彼が声を上げ、拳に握った手でドンッとテーブルを叩いた。


「……あなたは、名声と家柄の代わりに、父を犠牲にして……」


彼が私から手を離し、両手をこめかみに押しあてて頭を抱えた。


「犠牲に? そんなわけがないでしょう。あの人が、自分から私といっしょになることを望んだのに」


一方で、母親である外岐子先生は、余裕のある笑みで紅茶を啜っていて、


「……父が望んだからと、あなたは政宗の家に引き入れて……、ただ医者の家系を守るためだけに結婚をし、父の思いなど、まるで知ろうともしないで……」


裏腹な苦悶の表情を浮かべた彼は、


「……それが、犠牲でなくて、なんだと言うんです……」


掠れた声で苦しげに呻いた。


「あなたも医師であるなら、わかるはずでしょう?」


まるで宥めすかすかのようなその言い方に、彼が力なく首を左右に振る。


「なぜ、わからないのですか? 医師には必要であるはずの、バックグラウンドの重要性が……。


あの人にとっては、私の外科医としての名声と、代々医師である政宗の家柄が必要だったはずです。医師として、もっと上を目指すためにも……」


彼が、母親の言葉を振り払うように首をさらに振り、


「……わかりたくもありません…そんなものは……」


こめかみから瞼に手をずらすと、その目に涙が滲んだのがわかった。



「だから、あなたは、甘いのです」



さらに追い討ちをかけるように、容赦のない言葉がぶつけられると、



「甘いと……あなたは、きっと父にも、そう言ったんでしょうね…」


消え入るような声で話して、彼は弱々しく笑った……。


「責め恋」美形な医師は、サディスティックに迫る

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コメント

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妻、母より名声とバックグランドを選んで幸せだと思っているのは寂しいね。

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