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貧血気味なのは、自分で血を流したせいだけれど、最近ご飯を食べてないせいだと偽ってなんとか太宰さんに悟られないように出来た。
僕がずっと同じ苦しい顔をしていたから、顔から嘘を見抜くことが出来なかったのかもしれない。
太宰さんに、付き添って貰っていたら、とっくに夜が更けていた。
太宰さんは、まだ僕が心配なのか、帰るのを先延ばしにして呉れている。
敦「…もう大丈夫ですよ…!、今日は付き合わせてしまったごめんなさい。」
太「…まだ全然大丈夫じゃないじゃないか。…、…心配だよ。敦くんさえ良ければ泊まっていきたいのだけど。」
本当に僕を心配して呉れてるんだな、感じて、無理に返したくもなかったから、今日は太宰さんを泊めることにした。
敦「良いですよ」
太「ほんとかい?…」
敦「はい」
太「…良かった、じゃあ、有難く泊まらせてもらうよ」
感謝を伝えたいのは僕の方なのにな。
太宰さんも僕もお風呂に入って部屋着に着替えた。太宰さんの服は、僕がサイズを間違えて買った大きめの物を譲った。
敦「…、そろそろ寝ましょうか」
和室に2つの敷布団を並べて寝る支度をする。
…今日は寝れるといいんだけど。
太「嗚呼、…今日は寝れるといいね」
太宰さんは僕の方を見て横になる。少し恥ずかしくて僕は反対側を向いて目を閉じた。
敦「…おやすみなさい…、」
太「うん、おやすみ。…、寝れなかったら私を起こしてね」
敦「………はい」
いつもよりぎゅっと目を閉じて眠ろうと頑張る。でも、瞼の裏に映る過去がやけに鮮明で目を閉じることさえ苦痛になってきた。
敦「……、ッ」
声を出さず、太宰さんを起こさないようにそっと立ち上がってトイレに行った。
込み上げてくる吐き気が抑えられない。
吐きたく…ない。
吐きたくない。そう思った僕はトイレから静かに出てナイフを手に取った。
気持ち悪さをかき消すのにも、痛みは万能だと分かっている。
苦しく、僕を苦しめた過去じゃなくて、そこに隠れた愛情だけに身を委ねたい。
そう思うが一心、ナイフを左腕に突き立てて刃を突き落とした。
何度もそれを繰り返してゆくうちに、気持ち悪さが消えていく。
敦「…ッッ、っ、…っ」
ナイフを握っていた右手にも力が入らなくなってくる。
その感覚を味わってから、初めて僕は床に多く滴る血に気づいた。
…やばい、辞めないと、やめないと、
そう思うのに、右手は震えながらも動き続ける。
敦「…ッッ、う、っ」
気持ち良い、痛い、苦しい、悲しい、
よくわかんないな
生ぬるい血液が足元を伝う。
気が朦朧とし始めた中。
太「……!敦くん!」
突然、ナイフを手にしていた右手がぱっと奪われてそれを落とす。
すると、いつの間にか起きていた太宰さんが僕のことを痛いくらいに抱き締めていた。
太「ばか!!」
ごめんなさいと言葉を返したかったのに気を失ってしまったから、何も言えずに眠りについた。