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「なぁそこの兄ちゃん…って、この前のリーマンじゃねぇか!!」
「ほぁえっ!?!」
「え、ビビりすぎじゃね?ww」
暗く狭い路地裏でこんな大きい声で話しかけられたらそりゃビビる。おずおずと後ろを振り返れば奇抜な髪色をした怪しげなお兄さんが立っていた。豪快にコッコッと笑っていてこっちまで笑いが移りそうだ。彼が言うように、ついこの間お世話になったばかり。何をするべき分かっていなかったのか、はたまた何もする気力がなかったのか、俺には到底知る由もないが助けてくれたのはれっきとした事実だ。
「なーあ、またココにいるってことは欲しいんじゃねーの?『アレ』」
「っ……いや、そういう訳じゃ…」
「まぁとりあえず顔暗ぇし、話くらい聞くよ」
ガッと腕を組まれ、逃げられてたまるかとでも言うようにこちらをニヤリと見てくる。ここで逃げても脳天に銃を突きつけられて終わりだ。もう為す術もなく、彼に黙ってついて行くことしか今の俺にはできなかった。
「…へーぇ、まじ大変だねそれは」
「そうなんです、この前よりかはまだ軽いんですけど…でも苦しくて、」
怪しいのに、この前だって無理やり払わされたのに、この人は話を聞くのが奇妙なほど上手い。聞いて、相手に全てを話させるのを施しているようだ。俺の脳は危険信号を出しているのに、相槌を聞く耳と苦しさが溜まった喉はこの人に話したいと叫んでいた。
「じゃあ、これ。あげる」
「こ、れって……」
「苦しいの軽減されるよ、お代はちゃんといただくけど」
ぐるぐると焦点が合わなくなる。絶対に触れてはいけない場所に来た。絶対に受け取ってはいけないものを差し出された。ちらりと彼を見れば、垂れた目を細めて俺が受け取るのを急かすようにこちらを見てくる。無言の圧がなんとも怖い。すんと嗅げば、前の彼とは違う、なんか酒臭い匂いがしてどこか違和感を感じた。
「お前、どうすんの?受けとんの、受け取らねぇの」
「……うけ、とります…」
結局高いお代を払ってしまった。しかし、あの違和感はなんだったのだろうか。あの人はこの前、酒が苦手だとかなんとか話していた気がしたのだけれど……。
「たらぃまぁ〜!!」
「おいウェン遅いどこで何してたんだよ」
「んぁ……インスタで繋がった女の子とBARでお酒飲んでたぁ!!」
「はぁ?この前俺とシたよなお前」
「ん!!シたねぇ」
「…店じまい早めに終わらすから、すぐできるようにナカ掃除しとけよ」
「うぃ、りょおかぁいっ」
…なんとなく分かってしまった俺は大人になったのだとしみじみ思った。
⚠︎︎期間限定投稿です
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