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泣いているのは君のせい。

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泣いているのは君のせい。

11 - 11.また会う時は笑顔で

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2024年04月10日

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11.また会う時は笑顔で。


「千切、それ取ってくれ。」

「そっち飲み物足りてる??」

「すげぇ、まじの高級料理ばっか!!」


会場となる玲王の会社が経営しているレストランに足を踏み入れると懐かしいメンバーが忙しなく動いていた。

凛と手を繋いで足を進めるとその内の1人、國神と目があった。


「主役が登場しちまったな。」

「蜂楽がサボるから!笑」

「ちぎりん怖ーい笑」


みんな髪も背も声も、服装ですら大人になっていた。

それなのに何も変わっていない。

俺たちが出会ったあの場所と何も違わない。

やっぱりコイツらだと改めて感じた。


「潔、凛!席用意してあるから」


一足早く凛が席に座る。

俺は凛の肩を叩くと何も言っていないにも関わらず凛は黙って頷いてくれた。

蜂楽が凛に絡みに行く。

千切と國神が怒る凛を止める。

雪宮は呆れ、氷織は苦笑い。

珍しく来ていた馬浪は「飯が不味くなる」とキレていた。



その光景につい目を奪われていると黒名が横に来て肩を突かれた。


「黒名!」


黒名は人差し指を顔の前に出して手招きをしてきた。

黙って黒名の背中についていく。

レストランを抜けて階段を降りると広々としたホールにたどり着いた。

受付の人の横を通り、裏口に続くドアを出る。


「今日で今年も終わるな。」

「凛も今日で居なくなるんだったな。これからどうするんだ??」


段差に座って黒名と話していた。

肌寒くまだ薄着では辛い。


「凛の家の鍵を貰った。俺が帰るまで出ていくんじゃねぇぞって。だからあの家で暮らしていく。」

「…サッカーは。サッカーはやめるのか?」


黒名が小さくそう呟いた。

ブルーロックでもいつも俺の横でサポートしてくれた。

氷織と黒名は俺の背中を押してくれた。


「続けるよ。プロにはならないけど、近くのサッカークラブの監督に誘われたんだ。それを引き受けた。」

「子供に教えるのか!?」

「うん、俺は満足だよ。みんながプロになってる間、俺は未来のストライカーを作る。 」

決して何か確証があった訳ではない。

でも今の俺なら出来るという自信があった。

絵心が俺に与えた、気づかせたエゴを。

ノエル・ノアに憧れた幼少期の俺を。

みんなが創り出した俺のピースを。

凛が…凛が俺を愛してくれたことを。


俺は別の形で表す。返していく。

世界が俺を求めるまで、俺のエゴは閉まっておこうと思う。


プロになった所で、俺の夢はゴールじゃない。




会場に戻ると中では声がいくつも聞こえる。

人だかりができて凛も立っていた。


「あ、潔ッ!」


凛が俺に気付くと一斉に俺たちに注目が集まった。

1番手前にいた千切が振り返ることで中心の人物が見える。

車椅子に乗った長身の白髪と車椅子に手を添える特徴的な眉。

間違いない、凪と玲王だ。


「玲王…凪もッ!外出許可出たのか…??」

「あぁ、出た。肺も塞がって話せるらしんだけど3年も意識なかったから筋力が弱ってる。こりゃ復帰も難しいだろうな。」

「何言ってんの。また玲王とW杯優勝っていう夢見るよ。俺頑張る。」


車椅子の上で凪が玲王の手を握った。

それに対して玲王は今にも泣き出しそうな顔で笑っていた。


「ありがとな、潔。俺を止めてくれて。」

「俺じゃねぇよ、玲王が選んだんだ。凪と向き合う覚悟を決めたのはお前自身だろ。」

「…そうだったな、お前はそーいう奴だった。」


玲王は歯を見せて涙を拭うとそう言って俺の背中を叩いた。


後ろから氷織が現れる。

手にはワインの瓶が2本。横にいた雪宮もケーキを、さらに後ろからカイザーとネスが現れた。


「糸師弟がフランス代表枠で出るって聞いて様子見に来てやったぞ。(ドイツ語です💦)」

「復帰おめでとうございます。世一は残して行くのですか??」


みんなで凛を囲うようにして言葉を待った。


「残すんじゃねぇ、取っとくんだよ。お前ら日本にも」


凛が千切たちを見る。


「お前らドイツにも。」


凛はもう一度カイザーを見直した。


「勝って証明してやる。潔に相応しいのは俺だってな。」


凛が俺を見た。

いつもより強く睨むように。それでも暖かく、俺を大切に扱うような目線だ。


「凛ちゃん、俺たちだって感動シーンには誘導したい所だけど負けないよ〜!笑」


蜂楽が俺の背後から抱きついてきた。


「いくら糸師冴の弟だからって俺らも成長してんのは変わんねぇしよ。」


千切も負けじと俺の肩に手を置いた。


「死ぬ気で行かせてもらいますよ。」


雪宮が凛を見て微笑んだ。


「ってことやから手加減なんか甘いことせぇへんといてや。凛くん。」


氷織がとびっきりに可愛い顔でそう笑った。


「カイザー、面白くなりそうだね。」

「あぁ、ネス。良い思い出になりそうだ。」


カイザーとネスが今までにないほどの笑顔でそう話していた。


みんながまた集まっていた。

幸せが戻っていった。

もう泣かない。みんなが強くなってるから。

俺は俺なりのエゴで突き進む。


「凛、絶対負けんなよ。」


蜂楽は俺を離すと背中をそっと前に押した。

正面に居た凛に倒れ込むようにして抱きつく。


「…当たり前だってんだろ。」

「行ってらっしゃい、凛。」


「んじゃ飲も〜!!」


蜂楽が両手を天井に突き上げるとみんなが一斉に手を上げた。

俺は凛の手を持って上に上げる。


「凛、お前はここ!」

「コップ足りる〜?」

「足下げろ、行儀悪りぃだろ。」

「凪、体調は??」


みんながそれぞれ作り出して行く物語に俺がいる。

俺の世界にも凛が居てこいつらが居て。

それだけで幸せだ。いや、それが幸せだ。








その後大体の奴らは酔って各自帰宅。

冴が迎えに来たタイミングで凛をみんなで見送った。

凛が俺に手を振った。

小さく、恥ずかしそうに。

みんなが目を丸くしてその光景を見ていた。

凛は変わった。俺のものになった。

今、物語が幕を開けようとしていた。









⚠️次回最終回です!!!

泣いているのは君のせい。

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