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今日の機械化の感染者は106人です。ついに100人以上になってしまいました。皆様お気をつけてください。
明日の天気です。明日は…
「対策法がねぇと何もできねぇよ。何言ってんだバーカ。」
カイはスマホでニュースを見ていた。そしてベットから立ち上がった。スマホを写真立てが置いてある棚に起き、ぐぐっと伸びをした。
彼が寝ていた部屋には他にも6人ほどがベットで寝ている。それぞれが目を覚ましだした。
「おはよう。」
「まだ寝てていい?」
「今日はどうしようかな…。」
それぞれが部屋のドアから外に出ていく。彼はそれの様子をぼんやりと立ちながら見ていた。
なぜ一つの部屋に大人数が寝ていたのかというとカイは宿舎の持ち主だからである。いつも通り人を泊めていたのだろう。そしてなぜか彼も一緒に寝ていた。
「カイさん〜鏡はないのかしら?」
アルは急ぎ足で声の持ち主のところへ向かう。木造りの建物がギシギシと音を立てる。
「ああ、洗面所にもないんだよね、ごめんごめん。」
「もう!前髪が整えられないじゃない。…まぁ外には出ないけれど。」
「また追われたら大変だもんな、事態が収まってきたら鏡も買ってきてもらうから。」
「もう、なんなのよ。機械化機械化って…警察が追ってきて…怖かったのよ。」
「ああ、はいはい。何回も聞きましたから。そういう人を俺は匿ってるんで安心してください。」
「カイさんは優しいわね。よくわからない世の中だけれど、お互い頑張りましょう。」
「はい…そうっすね。」
彼女が去ってからカイはため息をついた。そしてまた寝室に戻り、スマホを取って開いた。
「博士、機械化とはなんでしょうか?」
「人間が機械になってしまう病です。恐ろしいですよね。」
「そして、機械化した人間を駆除していると聞きましたが…なぜでしょうか?」
「機械化した人間は危ない。襲われた例もあるのです。」
「なるほど、それを治す方法は…。」
「今のところないですね。被害が出る前に駆除した方が良いのです。」
「わかりました。テレビの前の皆様は機械化した人間に遭遇しましたらこちらの電話番号にお電話を…。」
「被害が出る前に駆除することが大切です。」
「あなたの家族を守る行動です。ご協力お願いします。」
「博士が出るって言ってたのに…何も言ってねぇようなもんじゃん…。」
カイはスマホに向かってそう言った。その声には誰も応えない。
「…ちぇ、もうこんな時間だし…朝ごはん作らねぇとな。」
カイはテキパキ朝ごはんを作っている。しかも宿泊客の分も含めるためとても多い。
色々な種類のパン、スクランブルエッグ、サラダが机に並ぶ。そして宿泊客がどんどん集まってくる。バイキング形式のようだ。
カイは客が集まったのを見て次にやるべきこと、洗濯に移る。また急ぎ足で歩いていく。廊下がギシギシと音を立てている。
「腹…すかねぇな…。」
カイは朝ごはんを食べないまま昼になった。昼ごはんを作ってひと段落したところ、また宿泊したいと言っている客が来た。
「ええと…4名様、でいいのか?」
「あ、後ろの人は一人だと…思います。」
「はい、了解。」
3人組と1人が追加した。この宿にはこれ以上人が入らなそうだが、イアは昨日のうちに掃除を済まし、部屋を開けた。
「一名様…ここの部屋を使ってください。」
「はい。」
一人で来たのは大柄な男性だった。なにか調査でもしに来たかと焦っていたが何もなさそうだった。
今日は忙しくなりそうだった。
朝ごはんも昼ごはんも残飯が酷いくらいに多かった。なぜか最近残飯が増えている。
夜ご飯は少なくしようと考えながら夜ご飯を作り始めた。
その瞬間、電気が止まった。
「…ブレーカーでも落ちたのか?」
カイは近くにあった懐中電灯を持ち、ブレーカーを探しに行った。キッチンからは少し遠い。
悲鳴が聞こえた。全部、宿泊客の声だった。
外が何故か異常に明るい。ライトで照らされているように感じる。そんなことはないとカイは窓から外を見ないようにした。
また悲鳴が聞こえる。今度は外からだった。そして鉄を壊したような音も聞こえる。
怖かった。彼は震え出した。宿泊客なんて気にせずに逃げ出した。いつもは音が鳴る廊下も何も音がしない。
屋根裏まで逃げた。ここならきっと誰も知らないだろう。誰も追ってこない。誰も見つけられない。
外のライトが消えたようで宿舎の中が真っ暗になった。少し動いて屋根裏部屋の外様子を見た。
撃たれた気がする。感覚がない。血も感じない。痛くない。
何かの音が聞こえた。いや、声なのだろうか?喋っている内容がなんとなく聞こえた。
「機械化した人間!一人見つかった!」
彼は銃を持ち、俺に向けた。彼は昼間に訪れた大柄な客だった。なぜ彼が俺を撃ってきたんだろう。
また撃たれる。殺されるのか?叫んだ。
「俺は人間だ!撃つのをやめてくれ!!」
彼はまだ撃つことをやめない。俺が機械化しているわけがない。ニュースで見ていただけだ。
「人間だ!機械化人間はここにはいない!」
叫んで、叫んで、叫んで、逃げた。
窓を割って外に出た。月の光が降り注ぐ。
窓の破片が舞った。そして落ちた。
窓の破片には機械化した人間が写っていた。
大柄な男はこの人間を探していたんだ、俺じゃない。
また走る。逃げる。
走った先に警察がいた。助けを求めようとしたら銃を向けてきた。
はぁ……。なんで?
感覚がしない。なにも感じられない。もう死にかけなんだろうなと思い立ち止まった。
なんだか笑いが込み上げてきた。
撃たれる。撃たれる。撃たれる。
「機械化した人間だ!」
「機械化した人間だ!」
「機械化したにんげんだ!」
「きかいかしたにんげんだ!」
…何が?
ガラスの破片が足に刺さっていた。抜いた。
そこには死んだような顔をした機械化した人間がいた。
ようやくわかった。俺なんだな。はぁ…鈍い。
全部隠してたんだ、鈍い、鈍い、鈍い、鈍い。
全部全部全部…機械化してたんだな。俺も、周りも。
なのに隠して…バカだな、俺。変な人生だったよ。
まだ撃たれている。もう感覚がない。俺が機械だとしても暴れる気力がない。
でも…やっぱり…こんなことを考える俺って人間なんだろうな。
大きな銃を向けられた。叫んで、叫んで、叫んで、叫ぶ。
「俺は人間だよ。ただの人間だ。それなのに何言ってんだよ、バーカ!」
笑った、最期に笑った。はぁ…楽しかった。
「機械化した人間が群れを作っていたそうです。」
「やっぱり機械化とは何かわかりませんね。」
「そしてその場にいた警察も機械化したそうで。」
「恐ろしいですね。早く駆除しなければ。」
「では電話番号を…。」
叫びは届く、きっとどこかへ届く。誰かが聞いている。誰も止められない。