この作品はいかがでしたか?
10
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【揺られ眠れば】
『精彩に欠く。』
私から見てこの小説にはそんな言葉が似合う。
エンディングもパッとしない、伏線が弱く、主人公の人格性が冴えないものだ。
「はあ…」
自分の過去の作品を読み、私は大きなため息を吐く。
だが、こんなことをしても意味がないなんて、ハナから分かっているんだ。
でも…と心の中で言い訳をし、また何回も何回も読み返す。
「自己嫌悪の言い訳」、という体で私はこの本を読んでいるのだろう。
私の名前は 睦月凛子、24歳で独身の冴えない小説家。
書いた本が売れなかった訳じゃない。かと言って本のおかげで名が知れた訳でもない。
リアルで面白いこと起きないかなぁ…と一人しかいない終電の一室で細々とつぶやく。
私は自分に起きること全てをノンフィクションの短編小説の一節だと考える。
そうすれば、編集者さんに怒られても、人を傷つけてしまった罪悪感をもすべて
物語の主人公という1番の自己嫌悪の言い訳が可能になるからだ。
逃げることしか出来ない自分にため息をついた。
はあ…もうちょっとで目的地…着いちゃうけど…少しだけ寝よう。
電車の揺れる音も、整理できてない考え事も、全てを投げ捨てたように、目を閉じればすぐに眠りについた。
コメント
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小説家なれよ