なんとなく、君にかつての思い人の姿を重ね合わせる時がある。
君を含め、歴代の日の本達は顔がよく似ている。
いや、パーツの位置と、基本的な形は同じだ。
時代によって異なるのは、まつ毛の長さや眉毛の形、雰囲気。
だから日本を見るたびに江戸を思い出すのは仕方がないことなのだ、と私は自分を納得させた。
ぐるぐると渦巻く感情を抑え込んで、周りで行われている会話のキャッチボールに注意を向ける。
「オランダさん」
日本の声に驚いて、ビクッとした私が面白かったらしい。
日本は控えめな笑顔を作って、くすくすと笑った。
気恥ずかしくなりながらも、再び心に蘇った謎の感情が渦を撒き始める。
君の笑顔を見たから余計に、貴方に対する想いが深くなってしまった。
この気持ちは一体なんなのか。
愛情か、切なさか。それとも独占欲?
貴方とは違う雰囲気を持つ君に恋をしたのだろうか。私は、日の本の国々なら誰にでもデレるのだろうか。いや違う、大日本帝国には愛情を一ミリたりとも抱かなかった。
内なる感情を勘付かれないよう、日本の話に相槌を打ちつつ、一つ一つの仕草や表情を追う。
似ている。似ているのだ。貴方に。
言葉遣いは違えど、表情の作り方や笑うタイミングなどが。
いっそ、抱いてみればわかるのかもしれない。
無茶苦茶に抱いて、貴方を抱いた時と同じ感覚があればきっと私は君を愛しているのだ。
だが、強姦したところで君の気持ちが自分に向くわけではない。
現に、君の仕草は好意を向けているものに対する仕草ではない。
ぬらぬら、むらむらする。
自分の気持ちを知るために君をぐちゃぐちゃにしたい。
でも、きっとそれをしようとすれば手段が目的に変わってしまう。
オランダは日本から目を自然に見えるようそらし、気づかれないようため息をついた。
だが、空気を読む事を生きる手段としている日本はその程度の演技では誤魔化せない。
オランダの仕草に気づいたようで、日本は会話を丸く締めた。
やはりつまらなかったか、と心の中で目を暗くする。
『どうも、オランダさんとは仲良くやれるかわからないな…。』
オランダが名前を“Holland”から“The Netherlands”に変更した時、日本は今までの「オランダ」から呼び名を変更しなくて良いと言われた。
少し、好意を持たれているものかと思っていたが、自意識過剰だったようだ。
日本はぺったりと笑みを貼り付けて、オランダに別れを告げた。
もの寂しげに、オランダが日本の背中を見送る。
ぐるぐると渦巻く感情が溢れてしまいそうだった。
この気持ちに名前をつけることができるのは、一体いつだろうか。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!