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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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曲名:おかえり/Tani yuukiさん

今回はリクエスト…!

リクエストしてくださった神様ありがとうございます!!


⚠️注意事項(必読)⚠️

・太文字で下線付きの文は歌詞本文から抜粋した部分です

・本家様とは一切関係ありません

・あくまでも個人的な考察です

・歌詞中に恋愛感情を彷彿とさせる表現が使用されているため、一部の方は腐向けと感じてしまう可能性もありますが、全て親子愛のつもりで書いています

・政治的意図は一切ございません

・ロシア侵攻の問題については、ここでは完全スルーさせていただきます

・文章の長さなどを考慮した結果、歌詞は一部省略させていただきました






ー1991年12月25日ー

夕闇がだんだんと夜の暗さに飲み込まれ、夕陽の名残がほんとんど消えた頃。

とあるところに、雑木林に囲まれて一戸寂しげに佇んでいる屋敷がありその中はまるで墓場のように静かだった。

木の葉の揺れる音さえも五月蝿いと感じるほどに静まり返ったその屋敷の一室では、とある少年がベッドの上に伏せてうずくまっていた。

その少年は、ソ連の養子の一人であり、構成国の一員でもある”ロシア・ソビエト社会主義共和国”である。



(主人公:ロシア)

お父様はいつ帰ってくるんだろう…?

僕の父親であるソビエト連邦様は、8日前の12月17日にソ連政府の活動停止を発表してそのまま姿を消してしまった。

僕達国の化身は人間とは時間の感覚が違うからただ単に「数か月ヶ月帰ってこない」というだけならばそこまで心配しないが…。

何せ、僕以外構成国の兄弟は家を出て行ったからこのだだっ広い屋敷に僕一人というのが寂しいのだ。

それに、お父様は今かなり危機的状況に立たされているという事実も相まって漠然とした不安がどんどん膨らんでいる。

お父様の現在の状況を鑑みると、ソビエト連邦が崩壊した後のことも考えなくてはならない。もしもソビエト連邦が崩壊したら、その時自分はその現実を受け止められるのか?冷静に対処できるのか?

「どんな大国でもいずれは衰退する」ということは解っているが、理屈が分かることと受け入れられることは別物だ。

もしもお父様が崩壊したら…僕は…僕はどうすれば…

そうやって布団の中でうずくまったまま悶々としていると、突然玄関の方から呼び鈴の音が聞こえた。

お父様が帰ってきたのだろうか?

少し期待しながら急いで玄関に向かう。

勢いよく扉を開けると―――

部下「こんばんは、ロシア共和国様。こんな時間にお尋ねしてしまい申し訳ないのですが、一つ大事なご報告があるので、急遽参りました。」

…なんだ、お父様じゃないのか。

少々落胆しながらも、部下の報告に耳を傾ける。

部下「本日、ゴルバチョフ様がソ連の大統領を辞任致しました。」

「…え?」

部下「最高会議も明日にはソビエト連邦の解体を宣言する意向だそうです。」

「…そんな、まさか…」

ついさっきまで頭の中で考えていた最悪の状況が実現してしまった。

部下が丁寧に封された書類の束を渡してくる。


その後、しばらく呆然としていて、気が付くと部下はすでに帰っていた。


なんとか今起きたことを頭の中で整理しようとするが、突然、心臓が強く掴まれたかのように痛くなった。

心臓の痛みは胸から喉へ、喉から鼻へ、鼻から目へと伝わり、目から涙が溢れ始める。

どうしよう。お父さんが死んじゃったらどうしよう。

今まで粛清と称してたくさん人を殺してきた。

何人も、何人も、躊躇うことなくこの手でソビエト連邦の反逆者を殺してきた。

そんな僕が今更どうして小学生みたいなことほざいてるんだろう。

確かに僕は小学生くらいの容姿をしているけど中身はもう十分大人だ。

それなのに、なんで、なんで…

あなたは今同じ空の下

遠く離れた場所で思い出を紡ぐ

どこかにいるはず、どこかにいるはず。お父様はきっと遠く離れた場所で僕のことを想ってくれてるはず。何度も自分に言い聞かせた。

抑えきれぬ想い抱き待ってるから

あなたがここへ笑顔で帰るまで

絶対いつか帰ってきてくれるよね?うん、きっとそうだ、お父様は絶対帰ってくる。だから、その時までこの家にいよう。つい数年前まで構成国の皆が暮らしていたこの家には、もう僕しか残ってないから。お父様が帰ってきたときに僕だけでも出迎えてあげないときっと寂しいだろうから―――





翌々日の朝。

寝室のベッドの中で、相変わらず僕は悶々としていた。

僕は「ロシア連邦」と改名された。ロシア共和国じゃない。構成国じゃない。

「これから一つの国を背負う」ということに対する漠然とした不安と張りつめた緊張感でぐちゃぐちゃになった頭の中に、お父様を思い描く。

今までの他の誰とも違う

あなたは太陽、僕が月だとするなら

その光無しじゃ輝けやしない

あぁ、やっぱり。昨日の夜からずっと考えてたけど、やっぱりそうなんだ。僕はお父様がいないと駄目な子なんだ。

僕にはお父様みたいな才能も大胆さも迫力もない。

「お父様への憧れと尊敬の念が、自分から見た自分への価値に”優秀”というフィルターをかけていたんだ」

そう呟いて、自嘲するように弱弱しく笑った。

そしてベッドの中でもう一度目を閉じて、昔のことに想いを馳せる。

ねぇ、なんで?あぁ、そこまで

返せるものもないのに、愛してくれる意味を

いつだって僕がそばに居たくて

今までくれた愛に応えられるように

冷酷で怖いけど優しい、そんな矛盾だらけのお父様のことが大好き。

眉一つ動かさず返り血を浴びる、冷たい目。

躊躇なく拳銃の引き金を引く、冷たい手。

聞いた瞬間重い苦しい緊張感が全身に走る、冷たい声。

でも、その反面で温かいところもあったんだ。

僕の頭をそっと撫でる、温かい手。

吐き気を伴う程の不安に苛まれる僕の心を何度も落ち着かせてくれた、低く温かい声。

お父様の温かい面に触れるたびに、大好きだと感じた。




そうやってお父様との思い出に浸っていると、突然玄関からの呼び鈴の音が耳に飛び込んできた。

ふと時計に目をやると、短針は8を指している。またしても部下が訪ねてきたのだろうか。

…でも、もしかしたらお父様が…?

そんな都合よく行かないと分かっているが、少しソワソワしながら階段を駆け下りる。

勢いよく扉を開けると、目の前に立っていたのは…

「こんにちは、ロシア連邦様。貴方に用事があるんです。中に入れてもらいませんか?」

そう言って強引に中に踏み入ろうとする見知らぬ男だった。

小さな落胆を覚えるとともに男の無神経で強引な態度に対する苛立ちを感じ、ぶっきらぼうに尋ねた。

「…誰ですか?」

「いやだなぁ…貴方の部下の一人ですよ。覚えていないんですか…?」

一人ひとりの名前と容姿を完全把握してるわけではないが、少々違和感を感じて反論しようとした、その時―――

パンッ

突如響いた発砲音によって鼓膜が強く刺激される。

ふと腹部に生ぬるい感触を覚えて視線を下に向けると、真っ赤な血が腹からひたひたと滴り落ち、床に落ちては平たくバラのように咲いていった。

「ッア”アァ、…ッ何ッ…これ…」

一拍遅れてじわじわと腹部に痛みが広がり、熱さと痛みに耐えられずに床に倒れこんで声にならない悲鳴を上げる。

「ッッッ―――――ッハァ、アァ”―――ッ」

そんな、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ誰か助けて助けて助けて

「お”、おとッ――ッさん”、お父、さん…」

あなたは今同じ空の下

遠く離れた場所で思い出を紡ぐ

抑えきれぬ想い抱き待ってるから

お父様とまた会いたい。

あなたがここへ笑顔で帰るまで

お父様が帰ってくるまで、この誰もいない家に僕一人残る。

そう心に誓ったのに。

誓ったのに、誓ったのに、誓ったのに、誓ったのに、誓ったのに。


ふと辺りを見るとその男はすでに姿を消していた。


今までは交わることのない

新しい世界を僕に見せてくれたあなたと

いつまでも、いっそどこまでも

目を閉じるその時まで赤い糸を

床一面に広がった血液の上に、人差し指をそっと滑らせる。

その血で赤い線を引き、指切りげんまんのように小指を立てて”血の赤い糸”にそっと添えた。

来世でお父様と会えますように…と願って。





―2025年某月某日ー

「あぁあ…だる…」

今日も朝が来てしまった。どこにも行きたくないし誰とも会いたくないが、国の化身である限りそうするわけにはいかない。


アメカスや中国から聞いた話だと、三十数年前、ソ連崩壊に反対意見を持っている過激な国民によって俺は殺されたらしい。俺を殺したって何にもならないというのに、全く馬鹿な奴だなと思わず呆れてしまった。

国の化身というのは人間と違って蘇生や体の改造が可能であり、俺は体の一部を改造されたうえで蘇生させられたそうだ。

生まれ落ちた日、半分だけ欠けた命

泣き喚いたんだ、満たされぬ何かに

蘇生させられて目を覚ました時からずっと頭の中の片隅に靄がかかっている。

何かが欠けている、心がずっと歪んでる感じがして気持ち悪い。


気怠さと雑念を心の奥に仕舞い込み、とっとと身支度を済ませて会議に向かう。

3Fの会議室B。扉を開けると他の常任理事国の奴らが馬鹿騒ぎしていた。

アメリカが遅刻していないことに少々驚きながら席に座ると、いつも通りそいつがダル絡みしてくる。

アメリカの腕を軽く振り払った、その時。

奴のジャケットから写真がひらひらと落ちてきた。

興味本位で写真を拾い上げると、そこに写っていたのは―――



記憶などなくともわかってたんだ

手繰り寄せた糸の先に答えを

「ッ―――――ッぁ、」

「おと、ぅ・…さん」

父親であるソ連という人物がすでに亡くなっていることは、随分前に知らされていたが、昔の記憶がなかったため何とも思わなかった。

頬に生温い感触が伝う。目から涙が溢れて滑り落ちているのだ。


また2人で笑えるその瞬間を

ここで待っているから

生まれ変わる前の出来事がとめどなく頭に流れ込んでくる。



叶わなかった。

そう、叶わなかったのだ、僕の夢は。

「はは…世知辛いな」

そう言って弱弱しく笑った。

この作品はいかがでしたか?

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コメント

5

ユーザー

ああもう最高です…本当にありがとうございます🙇(コンクリに埋まるぐらいの土下座)凄く儚くて感動しました…

ユーザー

謝罪したいことがあるのでお詫びいたします。 勝手にタヒネタにしてすみませんでしたぁぁぁぁぁッッッ!!! あと、文章が長いわりに内容は割とうだうだしてるの、本当にすみませんんんんッッッ!!!そして、ソ連からのロシアに対する想いが一切描かれてなくて申し訳なさ過ぎて土下座しても足りないくらい申し訳ございませんんんん!!!!!!

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