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萌香が、司祭――いや、もはやアンデッドと化したその人物に狙われた瞬間。
彼女の目の前で、まさに牙を剥き出しにした異形が迫る。
「──っ!!」
萌香の腕が震える中、短剣をしっかり握りしめて振りかざそうとしたその時、突如、背後から風のような音が響いた。
「止めろ。」
その声は冷静で、同時に強い意志を感じさせた。
萌香は反射的に振り返る。
そこに立っていたのは──
レイス・ワイル。
その赤い瞳が、まるで全てを見通すように冷徹に輝いていた。
「レイス……!?」
萌香は驚きながらも、一瞬安心する。だが、すぐにその焦りが胸に広がる。
「逃げて! あの司祭……もう、普通の人間じゃない!」
レイスは冷静に彼女を一瞥し、短く言った。
「心配するな。お前を守る。」
その言葉とともに、レイスの手が一瞬で闇のように動いた。
手のひらを向けると、闇の血が彼の周りに集まり、辺りの空気が一変する。
レイスの周囲に渦巻くように黒い霧が広がる。
萌香が目を見張る中、その血の霧が司祭を包み込んだ。
司祭はその異常な動きでレイスに近づこうとするが、血の霧の中に引き込まれた瞬間、突然動きが止まった。
「何……?」
司祭の顔が歪んだ。
レイスは無表情で、指をひと振りするだけで、霧がさらに集まり、司祭を締め付ける。
「これでお前は、俺のものだ。」
その瞬間、司祭の体が真っ黒な血に染まり、強制的に地面にひざまずく。
「動けなくなる……?」
萌香は目の前の光景に呆然としていた。
ただの吸血鬼だと思っていたレイスが、これほどの力を持っているとは。
「……すごい。」
レイスは血の霧を一瞬で消し、司祭を無理矢理立たせる。
「こいつは、もうただの死霊だ。」
レイスは冷静に、破壊された教会の中で、痛みも感じずに立つアンデッドをじっと見つめる。
「さあ、教えてくれ。お前をこうした奴は、誰だ。」
司祭は力なく頭を下げ、言葉にならない呻き声を上げた。
その後、レイスは、司祭の目を見据えたまま血を吸い上げるように、もう一度霧を集める。
「お前はもう、俺が調べる。」
その言葉が響いた瞬間、司祭の顔に一瞬の恐怖が走った。
彼が何かを知っている──その確信を得たレイスは、血の支配をさらに強化した。
「黙っていても無駄だ。お前が知っていることを、全部吐かせてもらう。」
その時、萌香は呆然としたまま、レイスの力を感じていた。
彼がただの放浪者ではない。
彼の力が、確実に彼を――この戦いを、勝者へと導くと確信した。
一一一レイス・ワイルが、再び目覚めた瞬間だった。