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静かな図書館の中、みりんは古びた本棚の前に立っていた。周りは、長年使い込まれた本の匂いと、どこか湿気を帯びた静寂に包まれている。その中で、みりんは吸血鬼に関する書籍を探していた。
「レイス……吸血鬼……」
呟きながら、彼女は本を手に取った。タイトルには『吸血鬼伝説』と記されている。表紙は色褪せ、傷だらけだったが、みりんにとっては興味を引いた。彼女はページをめくりながら、吸血鬼にまつわる伝説が載っている部分を探し出した。
――『吸血鬼は死者の血を吸い、力を増していく。力を得ることで長命となり、場合によっては不老不死のように振る舞う。しかし、その力が増すにつれて、自身が存在を制御できなくなり、冷徹な存在へと変貌する。』
みりんはページをめくりながら、レイス・ワイルのことを思い浮かべた。彼の冷徹な姿、吸血鬼としての力。彼がどれほどの力を持っているのか、みりんには想像もつかない。
「不老不死……って、レイスもかなり長い時間を生きているんやっけ」
みりんは本を閉じ、少し考え込んだ。もし彼が長い年月を生きているのなら、その経験がどれだけ彼を冷徹にしてきたのか、と思わずにはいられなかった。
「……せやけど、どうして彼はそんなに冷たいんやろか。」
みりんは本を戻し、次に手に取ったのは『吸血鬼の歴史』という本だった。レイスが吸血鬼貴族の末裔であるという事実を知ってから、彼がどんな過去を持っているのかに興味が湧いたのだ。
「吸血鬼貴族、ね……」
その本には、吸血鬼貴族が人間社会とどう接していたか、また血統の長い歴史が語られていた。吸血鬼貴族は、通常の吸血鬼とは異なり、権力や支配を求める存在として描かれ、王族や貴族の間に広がっていたという。
――『吸血鬼貴族は血統に誇りを持ち、王国の支配を狙う者もいた。そのため、貴族の間で戦争が繰り広げられ、しばしば裏切りや権謀術数が絡む。』
その記述に、みりんは思わず眉をひそめた。レイスがもし貴族の末裔なら、彼にもそのような血の跡が色濃く残っている可能性がある。
「裏切り、戦争……」
みりんは再びレイスを思い浮かべる。彼の冷徹な態度、そしてその手にある力。すべてが、過去の歴史から来ているのだろうか。
「もしかして、彼が冷たいのも、ずっとそんな争いに巻き込まれてきたからなんか?」
みりんは本を閉じ、深いため息をついた。彼の過去がどうであれ、今のレイスは彼自身であり、彼の行動に対して何かを感じることは重要だった。
「でも、レイス……どこまで本当に冷酷なんやろか。」
みりんは、もう一度レイスの姿を思い出しながら、立ち上がった。そして図書館の出口に向かって歩き出した。
「次に会うたら、もっと彼のことを聞かへんと。」
その思いを胸に、みりんは図書館を後にした。