短編集第1話 少女レイ/みきとP
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・すお→桜の一方通行の片想い
・死ネタ
・共学if
・1部自己解釈
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カン、カン、カン、カン、カン……
うるさく鳴り響く蝉の声、俺の大好きな彼の姿。
どうして、どうして、どうしてどうしてこうなっ
てしまったのだろう。
嗚呼、思い起こせばあの時から___
『あ、居た居た、ッ!! 桜く~ん!!』
「嗚呼、蘇枋か…。何だよ、?」
『はいこれっ!桜裙に似てる猫のキーホルダー見つけたからあげるよ!』
そう言って俺が彼にあげたのは、白黒模様で綺麗な黄色い目をしたキーホルダーだ。
「…俺に、似てるのか?」
『うん、すごく似てる!ほら、気に入ったから、それと同じキーホルダー買ったんだ。お揃いだねっ!』
「…ふは、っ。お揃い…か、」
そう呟いて微かに笑う顔。その顔が俺は好きだった。
嗚呼、やっぱり好きだ。此の儘ずっと彼と一緒に居て…あわよくば付き合って、ハグをして、キスをして……
そんなのは、ただの俺の妄想。彼とは恐らく結ばれないし、彼は皆のものだ。
それでも_俺は彼を独り占めしたい。依存したい。依存して欲しい。
でもそんな事できる訳_ 嗚呼、そうだ。
彼を誰かに虐めさせて、それを俺が助ければ、彼は俺に依存してくれるんじゃないか?
彼には悪いけど……
『仕方ない、よね』
「蘇枋、?どうかしたのか?」
『あぁ、何でもないよ、それより早く学校行こ?今日は2学期の始業式なんだからさ』
「お、おう…?」
3日後_
夏休みが終わり、9月のスタートを告げるチャイムが鳴る。
何時も通り彼はギリギリに来るのだろう、まだ教室に姿を見せていない。
何時も通りの日常_ではないかもしれない。
何故なら彼の机には”死ね”や”キモい”などの悪口の殴り書き、そして”花瓶”が置いてあったのだから。
もともと見ためを理由にヒソヒソと何か言われ続けていた彼だが、直接的な攻撃は無かったのと、彼が少し鈍感だから、特に異常は無かった。
_今日までは。
がらがらがらっ、
彼が来た。皆は彼の机と彼自身を順に見て、哀れみと同乗を浮かべた視線を彼に送る。
彼が自身の机を見て数秒。
「…誰、だよ、こんな事…したやつは、?」
「あははっ、悪ぃ悪ぃ。 お前死iんだと思って綺麗な花飾っちまったわ、笑」
「何その適当な言い訳!!笑」
「てかめっちゃ絶望した顔しててウケるんだけど、笑」
「今日からお前は、俺たちの遊び相手でぇ~す!!笑」
一軍女子とその取り巻き2人。そして一軍女子の彼氏の4人。
彼らが彼を虐める主犯格…否、正確にはそうするように頼んだ俺が主犯格なのか。まあ良い。
『…そろそろ俺の出番かな、』
俺はそっと立ち上がり、立ちすくむ彼の元へ駆け寄る。
『桜裙ッ!! 大丈夫…!?』
「す、おう…?」
『ねぇ君達、そういうのくだらないから辞めなよ?はっきり言ってダサいから。』
「なッ、てめぇ…蘇枋…ッ!!」
「やばっ、行こ行こ!!」
そうやって直ぐに立ち去っていく彼らに、もう少し反抗する演技してくれても良いのに、と内心文句を言いながら彼に優しく話し掛ける。
『桜裙、怪我は無い?怖かったよね…』
「…」
可哀想に。ショックで声が出ないのだろう。
『とにかく、まずは机を拭こう。綺麗な雑巾持ってくるね』
「…有難う、」
彼は目を伏せて、微かに笑った。
そう、これで良い。これで良いんだ。
彼への嫌がらせが続いて数ヶ月。季節すっかり秋となった。
彼はあれから、以前よりも俺と共に行動するようになった。
まあそれはそうだろう。彼の味方は俺しか居ないのだから。
他のクラスメートには、それぞれに脅しをしておいてねじ伏せ、担任には多額のお金を出して黙認させているのだから。
体操服がズタズタに切り裂かれていた時は俺が見学する代わりに体操服を貸し、彼がバケツの水を被らされた時は、俺が浴びせ返してやった。
その度に彼はか細い声で俺に有難うと言ってくれる。
なんて可哀想で可愛いんだ。早く俺だけのものにしたい。
まあそうなるまでは、そこまで遠くないだろう。
何時の日か、彼が俺に依存してくれる、俺を受け入れ、愛してくれる。
そう信じて、願っていたのに___
なんで、どうしてどうしてどうして!!
どうしてこうなってしまったんだ?
頭の中で自分に問い掛けながら、俺は商店街の最寄りの踏切前を目指して走っていた。
事の発端は、彼からの短い電話
この頃彼は、学校を休みがちになり、家を訪ねても応答はなかった。
だから、連絡が来た時は本当に嬉しくて、すぐさま応答したが、久々に聞く彼の声と発した言葉に絶望した。
《 蘇枋、今までありがとう。またな。》
たったひと言。淡々と告げられたその言葉が俺の脳に焼き付き、危険を知らせるアラームが頭に鳴り響いた。
そしてすぐに彼のスマホに忍ばせてあったGPSを頼りに、踏切まで走っていたのだ。
『はぁ”ッ、はぁ”…ッ、桜、裙 ッ… 』
なんでこうなった? 俺が間違えた?
そんなの今はどうでも良い、とにかく走らなければ。
もうすぐ着く。頼むから、頼むから間に合ってくれ。
居た。僅かに遠くに見える彼の姿。良かった、すぐそこに___
『桜裙、ッッッ______』
ガタンゴトン、ドン”ッッッッッッ”“!
『_______ ぇ、ッ』
ほんの数秒。その数秒で、俺の頭の中には様々な音が鳴り響いた。
踏切のカンカンカンという音。電車が通る音。
そして___
“何か”が電車に引かれ、潰れる鈍い音。
あっという間に電車は過ぎ去った。
そこには、彼”だった”ものしかなかった。
飛び散った赤黒い液体。白と黒の髪。見覚えのある制服。
そして、俺が彼にあげた、欠けてしまい、血がこびり付いた猫のキーホルダー ____
『桜、裙……?』
開いた踏切を横切り、彼の元へ近づく。
光を失った、彼の2色の瞳。
『あ”ぁ、あ”ぁ……あ”ぁぁぁ”ッッッ!!!』
『ごめんッ、ごめ”んなさぃ”ッ…桜裙…桜裙…ッ”』
彼からの返事はない。
もう時期も終わるであろう蝉の声と共に、彼の笑う顔、そして大好きな声が頭の中をフラッシュバックした。
どうして。なんで。なんで。俺から離れないで。
君が居なきゃ、俺には居場所が無いんだ。
俺は俺と君しか居ない、透き通った世界で互いに愛し合えたら、それで良かったのに。
それで充分幸せだったのに。
でも、これは俺の所為だ。俺の所為なんだ。
もういっそ、君の亡霊に取り憑かれて仕舞えば__
『嗚呼、そっか…そうすれば、良いんだね。』
再び踏切が閉まろうと、カンカンカンと音が鳴る。
遠くからは、電車の走ってくる音。
徐々に此方に、近付いてくる。
『桜裙、今__行くからね。』
そう言って君の前で立ちすくむ。
ふと後ろを向くと、今はもう居ない、透明の君が俺を指さしていた。
カンカンカン、カンカン____ガタン、ゴトン___
___ドン”ッッッ
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