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「ただいま帰りました、黛さん」
「ん、お帰り、ハヤトさん」
いつも通りの姿で彼は私を受け入れる。玄関で既に漂っているこの匂いはカレーだろうか、彼は味覚がなんだとか聞いたことがあるが大丈夫なのだろうか。それはそれでとりあえず自分に何か作っておかないと、と言う意思が見えて嬉しい。別に何も作っておかなくとも良いのに。
「じゃあ俺、寝るから。おやすみ」
「……はい、おやすみなさい」
ただここ数日。いや同棲を始めてからずっと。彼の態度がよそよそしいのが気になる。なんだか冷たいと言うか、なんというか。同棲を始めて未だに同じ机を囲った事がないと言うのはおかしいことだと思っている。
こういう料理は作ってくれるし、家事もしてくれるし。同棲してからそういう行為も増えると思ったが逆に少なくなっている。
「………」
彼は優しいし、こんなこともしてくれるのならきっと私の事が嫌いと言うわけではないのだろう。ただこんな態度をとられ続けるのだったらこっちも行動に出るしかない。
独りぼっちの食卓でカレーをすくいなさながら、今黛さんは部屋で何をしているのだろうか、なんて考えた。
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仕事からの帰り道、スマートフォン片手に話があると連絡する。明日は休みで、黛さんは専業主婦のようなもので。まあ、酷くしてもきっと良い日。
罪悪感が湧かないなんて事は一切ないけれど、これも私たちが近付くための一歩だろう。
家に帰って早速、私の帰りを待ちわびていたのか扉の音を聞いてやってきた。
「おかえり、ハヤトさん」
「ただいま、黛さん」
いつも通りの挨拶をし、リビングへと向かう。まだ黛さんは夕食を食べていないようだった。話があるのなら一緒に食べた方が良いとでも考えたらしい。それは賢明な判断だろう。
「それで、ハヤトさん。話って?」
冷や汗がたらりと垂れる。今日だけは、今日だけは厳しく躾けないとまた私に甘え続けるぞ、加賀美。そう自分に言い聞かせて口を開く。
「黛さん、そろそろその態度をやめませんか」
「……」
「あなたのそういう性格だとは分かっていますが、同棲生活にも支障をきたします」
彼もそんなことはわかっているはずだ。それなのに、と毎回後悔しているに違いない。
「俺は」
「無理だと言うのなら、私が素直にさせてあげますよ」
「え?」
素っ頓狂な声を上げた黛さんの手を掴み、ソファに押し倒す。簡単な話だ、できないのなら今ここで素直になれるようにしてあげれば良い。そう、これは躾だ。ツンデレというものでも行き過ぎればただの冷たい奴だ。
しゅるりとネクタイをといて、両手を彼の頭の上で拘束する。露出された鎖骨にぢゅ、と自分の印を付ければ、俺はテントを張っている彼の股間に手を当てた。
─────
ぐちゃ、ぐちゅ、ぐちゅ。
あなたからこんなにも卑猥な音がする、なんて耳元で囁いてやれば、彼の内壁が俺の指を締め付けた。いやだいやだと喚いている割には良い反応だ、彼はむしろこんな状況は好きなのかもしれない。
「ふふっ…好きだよ、灰くん」
体を交えた回数は少なくとも、彼の善い所を少しも知らないと言う訳ではない。指で少し強めに擦ってやれば、彼は面白いくらいに反応を見せた。
火照った頬、汗で張り付いた前髪、はち切れんばかりに膨張した乳首、ひくひくと物欲しそうにしている灰くんの蕾。
ああ、全てが愛おしい。
「んっ……あ゛っ!」
かり、と空いた指でピンク色胸の突起を弾いてやる。彼から出たとは思わないほど高い声が聞こえた。こんな時にしか出さないのだと思うと気分が良い。
「欲しい?灰くん。俺の」
「い、いらなぃ……!!」
「…へぇ」
しこりを強く二本指で刺激してやった。びくびくと体を震わせて、何も出さずにメスイキをする。
「も、や゛ぁ……!いき、たくな゛いッ」
いつもは冷静沈着でポーカーフェイスな彼が自分の手で乱れている。流石にそろそろ恋人の乱れている姿を見て自分も冷静ではいられないのだが………。
「灰くん、これからは素直になる?」
「なるっ、なる、から、ッ…!」
これは良かった、と思った。彼の足を掴み上げて、自身の上を向いたそれを女性器のようになっている蕾に宛がう。「え、え?」と困惑している彼は、言えば終わると思っていたのだろう。そんなはずはないじゃないか。
顔から血の気が引いて青く染まっていく。やだ、やだと喚いていても思い切り奥まで満たしてあげれば一気に静かになった。
「ー~~~ッ!!!♡♡♡」
いや、何も声が出なくなったと言うべきだろうか。いつぶりだろう、こうやって彼と体を繋げる日は。温かくて、柔らかいのに自分から搾り取ろうときゅうきゅうと締め付けてくる。これは限界も近いかもしれない。
「ん、は…んふ、」
貪り食らうように彼の唇に口づけ、舌を絡め取る。律動はやめずに続けていれば、酸欠になりかけている事なんて知ったこと。
僅かな抵抗すらも可愛い。蹴り飛ばそうとすれば、噛もうとすればできるのにしないと言うことは良いと言うことなのだろう。
焦点の合わない目、犬のように出ている舌、半狂乱になりながらも絶頂を迎えている彼の最奥へ、自身の欲を注ぎ込んだ。
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「ほんっとうに申し訳ありません…!!」
ああそうだ、ここまでがテンプレだな。層黛灰は出ない声に苦戦しながらも土下座をする社長を見て思った。
「別に」
「うわっ、声がガラガラ!?水持って来ましょうか!?」
「腰が痛い」
いつもこんな風に唐突にやって来ては、強引に抱いて翌日にはこうなる。ああそうだ、同棲する前はこんなものだった。
「…俺も、悪かったから」
「黛…さん」
「ごめん。ハヤトさんとどう接すれば良いのかわからなくて、冷たい態度ばかりとった」
好きだから。好きだったから。つい。
なんて何処の中学生の恋愛話だろうか。
「別に、たまにはそんなことがあっても良いんですよ…?」
「え?」
「その度に、私がちゃんとただしてあげますので」
なんだろう、昨日の余韻が抜けなかったのかな。
「いやー…しばらくはないんじゃないかなぁ」
「そうですか、残念です」
これからできるだけ、ちゃんと社長に素直にできるように頑張ろう。
…また、お仕置きされちゃうかもしれないけど。