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Dream of memorY.1
ー僕は、初めての学校に行く。
本当の親がいなくなってしまって、知らない人が僕を引き取った。
元々いた所から少し離れたところに家があり、そこから近い学校に行くことになったからだ。
『この子は人狼ですが優しい子なので、どうか、よろしくお願いします。』
新しい母が言った。
『はい。わたくしの学校にも1人、人狼の子がいますので、狼夢君も安心できると思いますよ。』
この学校の、校長先生だろうか。
優しそうな人だ。
前の学校でいじめられたことがあるから、少し安心した。
『狼夢を、本当によろしくお願いします。』
母は、頭を下げる。
そして、部屋から出ていく。
僕は母が出ていくのを見た後、校長先生の顔を見る。
!
校長先生の顔つきが変わっていた。
『狼夢君。学校を楽しめるといいですねぇ。』
その顔は、僕を見下しているみたいに見える。
怖い…
でも、舐められないために…
僕は、
いや、
俺は、
強くみせるために、
『はい。楽しめればと思ってます。』
笑顔を見せず、少し冷たい声で言う。
優しくすればするほど、舐められることを知った。
優しくすれば周りは俺のことを利用しようとしてくる。
だから、
優しくするのはもう、やめる。
『人狼として生きていくなんて、可哀想に。』
そんなことを言っているのに、笑っている。
なぜ、人狼だからと嫌な思いをしなきゃいけないんだろう。
『はい、そうですね。』
俺は、軽く流した。
相手をしていても無駄だろうから。
『さて、担任の…』
『教室に行ってきます。』
俺は席を立ち、部屋を出る。
あんな人の言う言葉なんて聞く必要はない。
やっぱりここもか。
他のところならと、少し期待していたのにな。
まだ、ほとんど知らない学校。
とりあえず歩く。
他の生徒だろう声が聞こえてくる。
壁に寄りかかり、奥の方を見てみる。
数人の生徒たちが走り回っていたり、何かを話していたりしていた。
こっちはやめておこう。
来た道を戻り、反対側に向かって歩く。
こっちは人が少なそうだ。
まっすぐ行くと、体育館らしきものがある。
横には階段がある。
とりあえず階段を登り、二階へ。
理科室、音楽室…
いくつかの教室が見える。
と、
『調子に乗るなよ!』
バチン!
『いたいよ…』
喧嘩か?
いや、いじめっぽいな。
嫌なことを思い出した。
近づかないでおこう。
『全部お前のせいだ!』
『きゃあっ!』
・・・
『学校に来んなよ。』
『お前なんか…』
『やめて…』
あぁ、
イライラする。
『しんじゃ…』
『何やってんだお前ら。』
皆の視線が集まる。
やらかした。
初日からやらかした。
絶対しないと決めたことを…
『は?誰?』
そこに3人の男の子と、1人の女の子…
『ぁ…』
この子が…
さっき、校長が言ってた人狼の子か。
酷い傷だ。
『何のようだ。』
『てか、コイツも人狼じゃね?』
『何しに来たんだよ!』
男の子たちが言う。
『今はそんなことどうでもいい。何してんだって聞いてんだよ。』
俺は、男の子たちを睨む。
『相手にするの、やめとこうぜ。』
『あーあ、つまんないな〜』
『あんなヤツ、ほっとこう。』
男の子たちは、去っていった。
『ちっ!』
俺は舌打ちをした。
ムカつく野郎だ。
ここでも、
人狼がターゲットにされていた。
もう、未来が見える気がする。
酷い未来が。
もう行こう。
忘れてしまおう。
結局、ここでも人狼はいじめられていた。
『あ、あの…』
後ろから声がした。
俺は振り返る。
『あの…助けてくれて、ありが…』
『助けたわけじゃない。』
『・・・』
女の子は下を向いてしまった。
『はぁー。大丈夫か。』
この子はいじめられた側だし、強くみせる必要はないか。
女の子に手を差し出す。
これが、演技でなければ…
女の子は、こちらを向いた。
初めて見た。
自分以外の人狼を今、初めて見た気がする。
女の子は戸惑っていたが、ゆっくりと手を俺の手に乗せた。
その手は震えていた。
手だけじゃない。
身体も震えていた。
怖かったんだろうな。
俺も、あの時は怖かったからわかる。
『ありがとうございます…』
顔だけでも、複数の傷がある。
乗せられた手にも、酷い傷が…
今日だけのものではないだろう。
『あの、きみは……』
『狼夢。今日から転入する。』
『助かりました…』
か弱い声。
よく聞こえない。
『なんだって?』
『あ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……』
『謝るな!何も悪いことはしてないだろ。』
それだけ、怖いのかもしれないな。
『ぅぅ…』
『今日から俺がいる。もう1人じゃないんだ。』
もう1人いるだけで、安心感は大きく変わるはずだ。
俺が舐められないように振る舞えば、この子にも酷いことはしないだろう。
きっと…
人狼。
まず、このことをよく知らないといけない。
髪の色、目の色が黒か茶色ではない人のことだと言うことくらいしか知らない。
でも、それだけでこんないじめを受けなければならなくなったとは思えない。
キーンコーンカーンコーン!
チャイムが鳴った。
確か、
1組だったはず。
3年生の教室はどこだろう。
『あの、狼夢さま。教室に行ってきてもよろしいでしょうか…』
『さ、さま?』
さまって、確か偉い人に向けて言うんじゃ…
『さま…』
女の子は、また小さな声で何かを言った。
『まぁいいや、別に行ってきていいぞ。』
そう言うと女の子は深々とお辞儀をして、行ってしまった。
『あ、』
場所を聞けばよかった。
まぁいいか。
ゆっくりと、歩きながら探す。
っと、
ここか。
そこに。3-1と表示されていた。
中に入ろう。
扉を開ける。
なんて言われるだろう。
何をされるだろう。
怖い。
扉の先には、昔の学校とあまり変わらない教室があった。
だけど、
そこにいる人は誰も知らない。
『おや、狼夢君。1人で来たのかい?』
先生らしき人が言った。
『はい。』
ただそれだけを言った。
この先生もきっと…
『ええと、今日からこのクラスに転入する子が来ましたので、狼夢君、まず自己紹介しましょうか。』
今のところ、問題はないみたいだ。
『はい。○○小学校から転入した、ーー狼夢です。』
これくらいでいいだろう。
『はいありがとうございます。』
ずっとこのままならいいのに。
『狼夢君の席はあそこだよ。』
教室の奥の方を指さされた。
とりあえず、奥まで進む。
『うわーマジかー』
『人狼じゃね?』
周りがボソボソと喋っている。
嫌な言葉が聞こえる。
でも気にしない。
・・・
『マジかよ。』
俺を見て嫌そうな顔をしている人。
さっきいじめてたヤツらがいた。
コイツらも同じクラスなのか。
嫌だな。
そんなことを思いながら、自分の席を探す。
ここか。
1つ、空いている席があった。
席がないということがなかったことに安心する。
座ろう。
『狼夢さま…』
聞き覚えのある声が聞こえた気がする。』
さま呼びする人なんてなかなかいないだろう。
隣の席を見る。
やっぱりか。
さっきいじめられていた人狼の子がいた。
別のクラスだと思っていたけど、同じクラスなのか?
『よろしく。』
それだけを伝える。
信じられない。
何か罠がある気がする。
不安だった。
自分以外、全員敵だと思っていた方が良いだろう。
授業が始まる。
特に、問題なく進む。
1時間目が終わる。
休み時間だ。
あの子は、どこかへ行った。
『・・・』
あの子を追いかけてみるか…
何かわかるかもしれない。
学校を見て回るついでだと思えばいい。
俺は席を立ち、あの子が行った方へ歩く。
ぎこちない足取り。
いつか倒れそうだ。
あの子が、道を曲がった。
なんだ。
トイレか。
ならいいや。
行ってないところを見てまわろう。
なるべく、人がいない方に行こう。
でも、こっちは…
他の学年の教室くらいしか無さそうだな。
進む気にはなれない。
戻ろう。
振り返ると、
『やあ、何してんだ?』
俺もまた、後をつけられていたらしい。
『学校を見てまわろうとしてただけだけど。』
『なんか冷たくね?』
1人の男の子が言った。
コイツは、同じクラスのヤツか。
『いや、別に。』
『その態度、気に入らないんだけど。』
『緊張してるだけ。気にしないで。』
『んなわけ。そんなんじゃないだろ。』
そして、近づいてくる。
と、
ドン!
身体を強く押された。
『人狼のくせに、調子に乗るなよ!』
睨みつけられた。
これが、人狼の運命か。
『調子なんか乗ってないけど。』
そんなもの、知らない。
『は?』
数人でいじめようとしてるのか。
『調子に乗ってないって言ったんだよ。』
『それが調子に乗ってんだよ!』
足を蹴られる。
何を言っても無駄だと分かった。
もう、何を言っても変わらないだろう。
顔に、拳が飛んでくる。
俺は避ける。
けど、それだけでは終わるわけもなく。
また、拳が飛んできた。
拳を、手で受け止める。
初日からこれだ。
こんな日々がこれからも続くと考えると嫌になる。
俺は睨み返す。
と、
チャイムが鳴る。
男の子たちは舌打ちをして去っていく。
どうせまた教室で会うけどな。
その後も、休み時間になると暴言暴力の嵐に巻き込まれる。
今日だけで、複数の傷ができた。
あーあ、ひでぇアザだな。
でも、
これくらいならもう慣れている。
それほど痛いとも思わない。
さて、帰ろう。
僕は、帰路につく。
それなりの距離を歩き、家に帰る。
親には傷が見られないようにしよう。
そうして、面倒な日々が続く。
2日目。
学校につけば俺の席に、
落書きがされてあった。
机にびっしりと、悪口が書かれていた。
隣を見る。
まだあの子はいないけど、あの子の席にも落書きがされてあった。
まぁ、手を出されるよりはマシだと思うしかない。
俺は気にしないことにした。
けど、
『今日も学校来たんだ〜』
『来なくてよかったのにな〜』
複数の人が笑っていた。
と、
ゴミを投げられた。
そして今日も次の日もその次の日も、酷い目にあった。ー