「あー…やっぱ死んだ」
読みかけの本誌を閉じ、天井を見上げた。
気になっていたキャラクター。推しって程じゃないが好きなキャラだった。
…骨すら遺さず消えた。
またこのパターンか、と思いつつ充電していたタブレットの電源を付ける。
ようつべを見過ぎてバッテリーが湯水の如く消えてしまって、まだログインしていないのだ。
時刻は22時をとっくに過ぎ、23時に差し掛かっている。
このまま寝てしまいたいが連続ログインを途切れさせる訳にはいかない。
それに、私には”まだ”生きている推しがいるのだから。
そんなこんなでログインボーナスを受け取る。
本日のタイトルコールとお出迎え(名称が分からないのでそう呼んでいる)は言わずもがな、三推し。
真面目に嫌われているレベルで推しはタイトルコールとお出迎えには来ない。
やはり貢ぐ金額が足りないのか。
でもこれ以上は推しより先に私がサラダバーしてしまう。
試験やゲストルームの掃除、後は家具を作るための資材を確保する。
ランクはもう最大に達しているので授業は今日は別にいいか。
「あーあー…ここに行けたら学校楽しくなんのになー…」
叶うわけも無い妄言を吐く暇があれば心の底から勉強しろよ、と思っている。
だがやる気は微塵もない。
推しの靴を舐める気とモブおじをぶつける気は有り余っているのに。
「…お腹減ったな、コンビニ行くか」
ほーら、そんなことでお金使うから貢ぐ金額減るんだよ。
貢いだところで推しは来ないが。
数年前に買って貰った小さめの財布を持って、履き潰しているスニーカーを履き、外に出た。
────────────────────────────────────────────
「から〇げくん美味いな〜」
推しの好物は私の好物。私の好物は推しの好物。(違う)
深夜の食べ歩きは嗜好。背徳感はスパイスだ。
横断歩道に着いた。しっかりと青信号になっているのを確認する。
トラックに轢かれたとて、転生できるわけないから。
…何故か視界の右側が明るく輝いている。
それに、車の走る音。…走る音?
気の所為気の所為。きっとそういうタイプのユニーク魔法だ。
間違えた現実にはユニーク魔法なんて存在しない忘れていたフラグ回収早すぎだろ
車…ではなく大型トラックのヘッドライトの方に視線を向けると、手遅れなのが分かった。
あ、死ぬんだ私。
そう感じた瞬間に、人生最初で最後の激痛が身体に走ると、身体が宙に舞う。
そのまま身体が地に強く打ち付けられ、見たことも無いレベルの血の海と食べかけのか〇あげくんが転がっているのを見たと同時に、意識が地面に溶けるように消えていった。
─せめて、推しをリアルで見たかったな…
────────────────────────────────────────────
『どゔじで死゙ん゙じゃ゙っ゙だん゙だよ゙ぉ゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙』
【殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す】
《意味は…あったのか…?あの死に…どうして…》
〔幸せならそれでいいんだ…本人達が幸せなら…私は…〕
〈ゔゔぅ゙ぅ゙ぅ゙ぅ゙ぅ゙ゔゔゔん゙ン゙ン゙推しが推しをごろ゙じだ生ぎでげな゙い゙〉
(なんだこいつら)
安心してください、声には出していません。
私は気が付くと小綺麗な廊下に居た。
この頭の騒音と引き換えに生き返ったのか。
妙に視点が高いし、学校の制服を着ているような硬っ苦しい感じがする。
てか頭の中のこのうるさい奴らは誰なんだ…1人だけ物騒なやついるけど。
“コイツらが誰か”…そう考えている時に聞き覚えしかない声が私の耳に届いた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!