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めっちゃ面白い!あと、ジョージ、、、がんば! 続き待ってます(*´꒳`*)
夜の街に、しとしとと雨が降っていた。
吉田武史は長傘を片手に、路地を歩いていた。ビルの明かりが滲む中、靴音だけが響く。傘をしているのに、彼は重く濡れたような気がした。
耳にはまだ、あのメールの言葉が残っている。
「仕事だ。傘を持て。」
“仕事”──それは血と影の世界。もう縁を切ったはずの“殺し屋”としての自分。だが、何かが彼を引き戻そうとしている。
曲がり角を抜けた瞬間、吉田は立ち止まった。
「待ってたぜ、タケシ。」
雨音の向こうから、懐かしくも嫌な声が届いた。暗がりの中から現れたのは、革ジャンを羽織った男。顔に刻まれた無数の傷と、嗤うような目つき。──“薩魔威猛”のひとり、鳴海ジョージだった。
「十四年ぶりだな。ずいぶん大人しくしてたみてぇだけどよぉ…」ジョージはポケットからナイフを取り出し、ニヤリと笑った。「俺はアンタが戻ってくるのを楽しみにしてたんだよ。」
吉田は無言のまま、ゆっくりと傘を構えた。
「まさか、その傘、まだ使えるのか?」
ジョージの声に応えるように、吉田の傘が音を立てて開いた。次の瞬間、鋭い刃が傘の骨から飛び出す。
「確認するか?」吉田は静かに言った。
雨音が、一層激しくなった。
──つづく──