雨は止む気配を見せなかった。路地の薄明かりに、黒い傘とナイフがきらりと光る。
「相変わらず…えげつねぇ傘だなぁ。」
鳴海ジョージは舌を鳴らし、ナイフを軽く回した。
吉田武史は無言。傘をゆっくりと回し、刃を雨粒ごと滑らせる。まるで踊るような動きだ。
「お前がここにいるってことは、次の仕事は俺か?」ジョージがニヤリと笑う。
「違う。だが…邪魔をするなら、始末する。」
その瞬間、ジョージが動いた。足音を消すように水たまりを蹴り、一直線に吉田に向かって突っ込む。ナイフが雨を切り裂いた。
だが、その一撃は空を切る。
シュンッ…
吉田の傘がしなやかに開き、ナイフを弾き返す。続けて傘の先端が鋭く突き出され、ジョージの顔をかすめる。
「クソッ…!」ジョージはバックステップで距離を取る。
「鈍ったな。」吉田は淡々と告げる。
「お前が速すぎんだよ…!」
だが、ジョージも殺し屋のひとり。次の瞬間には体勢を立て直し、今度はフェイントを織り交ぜながら攻め込む。ナイフと傘がぶつかり合い、金属音が夜の雨に響く。
「何のために戻った?」ジョージは息を切らしながら問う。
「戻りたくはなかった。」
吉田の目には、かすかに哀しみが宿っていた。
「じゃあ、何があった?」
その問いに答える代わりに、吉田は傘を閉じる。雨粒が飛び散る中、先端がジョージの足元を狙い撃つ。ジョージはギリギリでかわすも、バランスを崩す。
「終わりだ。」
吉田の傘が、一閃。
だが、ジョージは笑った。
「…さすがだな。だが、俺を殺せば…面倒な連中が動くぜ?」
吉田の動きが、一瞬止まる。その隙を逃さず、ジョージは後ろへ飛び退いた。
「…次に会うときは、もっと派手にやろうぜ、タケシ。」
そう言い残し、ジョージは闇の中へと姿を消した。
吉田はただ、冷たい雨に打たれながら、傘を静かに閉じた。
次の仕事は、すぐそこまで迫っている。
──つづく──
コメント
3件
めっちゃ面白い!ジョージを○すと動く面倒な連中ってなんだろ、、、? 続き待ってます(*´꒳`*)
最高すぎだぜ師匠、、、((は? こんなにも通知が来るの楽しみな参加型はねえよ、、(((?