コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「好きです。付き合ってください!」
放課後の教室で女の子を呼び出して、優斗は告白する。
突然の事で驚いたのだろう。
告白された女の子は「えっ」と声を漏らした。
「入学式の日、迷子になってた所を助けてもらったあの時から、ずっと好きだった」
どうしようか本気で焦っていた時、彼女が手を差しのべてくれた。
ちょっと優しくされたからって好きになるような情けない男だということは分かっている。
それでも好きなものは好きなのだ。
「あの、えっと」
困った反応をしている。
それもそうだ。最後に会ったのが入学式で、いきなりこんな陰キャラに呼び出されて告白される。
こんなに困るようなことは他にない。
「ごめんね?多分、人違いだと思う」
高鳴る心音を聞きながら待機していると、そのような言葉が聞こえた。
「え?」
「も、もし本当にそうだったとしても、君のこと全然知らないし、それに……」
優斗が腑抜けた顔をしていると、衝撃の言葉が耳に入る。
「私、彼氏いるから──」
その言葉を聞いた瞬間、今までの馬鹿らしい日々が頭で再生され、ひびが入り出す。
ぴきぴきと音を立てては、崩れていき、
ついには──割れてしまった。
◇◇◇◇◇◇
気が付いた頃には、教室には優斗だけ。
鞄を持って、学校を出た。
辺りは夕焼けに染められていて、とても青春色。その色すらも、優斗は灰色に感じた。
自己満の日々で、人違いと言われ、もう相手もいたらしく、全否定されるように振られてしまった気分。
「おい、まだ赤だぞ!」
鞄を握り締め、涙を流す。
高校一年生にもなって、本当に情けない。
「俺だって……」
言葉を発した時、視界の右側から大型な何かが走ってくる。タイヤが付いていて、背中部分には長方形の鉄。
それがトラックだと気付いた時には、もう遅かった────。
◇◇◇◇◇◇
「ぁぁあっ゛!」
体の右側に大きな痛みを覚える。
辺りを見渡せば、黒に塗れた空間だった。
「……ここは??」
優斗は確かに、トラックに轢かれた。
だけど、体が吹き飛ぶところまでしか記憶がない。痛みが襲った後にはもうこの空間。
だけど、ここが何の空間なのか。
検討も付かない。
「やあやあ。哀れで無謀で悲しき少年よ」
優斗が混乱していると、左側から男の声が聞こえる。聞いている限り、煽られているようだ。
「誰だ?」
左側に視線をやると、黒の船長帽子を被った白髪のイケメンな男がいた。
年齢は二十歳くらいで、スーツを着ている。
「私は白夜。君の処分を担当することになった『神の使い』と言った方が早いかな?」
白夜がそう言うと、帽子を取って地面に落とす。落ちる様子は不思議で鳥の羽が落下する時のようだった。
「……処分ってことは、やっぱり俺、あそこで終わったんだな」
とても短い人生。
結局、彼女すら出来なかった。
優斗が表情を暗くしていると、白夜が落ち着いた瞳で見つめてくる。
「……ああ、君は終わった。これから君を判決場に連れて行こう、と思ったんだが」
「?」
予想を裏切るような言葉に優斗は額のしわを寄せる。
「正直君、納得してないだろ?」
問いかけられた瞬間、図星を付かれた気分になった。全く持って、その通りなのだろう。
「十六歳にして肉体を去り、青春すら出来ていない。学力も運動神経も絶望的、恋人もゼロで散々な振られよう、私だったら死にたくなるね」
嫌味なのか、同情なのか、この男はよく分からない奴だ。
「そんな人生を送ってきた君を判決場に送るのは、私の良心が痛んでしまう。だから」
「君に、チャンスを与えよう──」
白夜の言葉の意味。
本来、判決場という場所に送らなければならないが、あまりにも悲しい人生だったから、チャンスを与えてやる。
つまり、同情から生まれた提案。
とても悔しい気持ちになった。
「チャンス?」
優斗が聞き返すと、白夜は人差し指を鳴らす。すると、黒一色の空間に背景として、地球が五つ浮かび上がる。
「私が作った五つの世界に君を送り込む。そこで君を待つヒロインを攻略してほしい」
この男は何をふざけたことを言っているのだろうか。
「ギャルゲーじゃん……」
優斗がかつて遊んだことのあるゲームと同じ仕様。
それをリアルでやるみたいなものだろう。
「そのギャルゲーをやってほしいんだよ。ギャルゲーを通じて、君が得た答え、君が得た感想、君の感情を知りたい」
続けて白夜が言った。
「そして、君の答えが聞きたいんだ」
「答え?」
どういう意味なのか、聞き返す。
「同じ世界に戻って、やり直すか。それとも判決場に行って、極楽か地獄に行くか」
「それなら、今すぐにでもやり直したいんだけど……」
「今すぐには難しい。だから、君が攻略している間に、私が上と話を付けるんだ」
「なるほど」
ならば、やってみようか。
ちょっとした暇潰し程度にだが、悪くはない。
優斗は自分の心の中で決断する。まるで、
はさみを使って、糸を切ったよう。
「じゃあ、やる」
優斗の返答を聞くと、白夜が微笑む。
「分かってくれて助かった。それじゃあ、またいつか。次会う時、君にどんな変化があるのか。楽しみで堪らないよ」
その言葉を聞いた瞬間、再び体の右側に衝撃が走った。それと一緒に意識も飛んだのか、目の前が真っ暗になった。