コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「体育祭で出る競技を決めまーす。」
体育委員のはっきりとした声が教室全体に響き渡る。
「げっ」
四魔れんげの顔が歪む。
本日6時限目は自習の時間だったが、体育祭が近いということでホームルームの時間に急遽変わることになったのだ。
体育委員が黒板に競技名を書いていく。
「なんでこのタイミングなのよ…!体育祭の競技決めだったら帰ってたのに…!」
れんげは拳を握り悔しがった。
「じゃあ、今から帰ればいいじゃないか。」
そう言い放った十文字翼にれんげは睨み返す。この状況で帰ってしまえば間違いなく目立ってしまう。以前、堕魔死神の仕事で男子生徒をたぶらかし、女子生徒にかなり嫌われてしまった身からすると、この学校生活をうまく送るには、目立つような行動は取れなかった。
なんとか体育祭の競技決めが終わり、放課後になった。
「あーあ。競技だけさっさと決めて当日は休もうもう思ったのに、この調子だと本番出ないといけない雰囲気だったわ。」
競技決めで盛り上がり、やるからには優勝を目指そうと体育委員がクラスの士気をあげたのだ。この様子を見てれんげは益々引き下がれなくなっていた。
「まぁ、俺もそこまでやる気はないさ。でも…」
ん?と、れんげは十文字の視線の先を見て呆れ果てた。十文字の視線の先には、ミホとリカと一緒にいる真宮桜の姿があった。
「真宮さんに良いところを見せるチャンスだと思えば、こんな退屈な体育祭も悪くないと思うんだよな。」
「あんた、本当に桜のこと好きね。」
話にならないわと、今度は薔薇の内職を黙々とこなしている六道りんねに話しかける。
「あんたもどうせ、桜に良いところを見せたいとか何とか思っているんでしょうね。 」
皮肉混じりにそう言うと、りんねは大きなため息をついた。
「そんなわけないだろ。俺だって出たくなかった。現世でうまくやる為には今回は仕方なかったんだ。」
ふぅーんと、れんげは適当に相槌を打つ。
すると、友達と別れた真宮桜がやってきた。
「六道くんたち、今度の体育祭、本番出るの?」
いつもの優しい声でそう問いかける。
「出るに決まってるでしょ。こんなもの見せられたら休めないじゃない。」
れんげが呆れて言った。
「真宮さん!俺も出ようと思ってるんだ!…もし良かったらクラス対抗リレー、応援してほしいんだけど、いいかな?俺、意外と足速いから…」
「小学生か!」
れんげがすかさずツッコミを入れる。
「もちろん!翼くん、応援してる。」
笑顔で答える桜に心を撃ち抜かれたのか、十文字はスキップしてどこかへ行ってしまった。
「六道くんも体育祭出るよね?」
「まぁな。」
りんねは桜が十文字に言った「応援してる」という言葉に引っかかりながらそう言った。
「良ければ手作りのお弁当作ってこようと思うんだけど、六道くん食べる?」
「いいのか!?」
りんねの顔がぱぁっと明るくなる。さっきまでの仏頂面が嘘みたいだ。胸のひっかかりも気付けば無くなっていた。
れんげは頭を抱え込んだ。
「いいよ、楽しみにしておいてね。」
りんねも桜の笑顔にやられたのか、頬が赤く染まっているのが見えた。
「どいつもこいつも馬鹿みたい。」
そう呟いた声は誰にも届かなかった。