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もう一人格は、君を守っているんだよ。
*優しく、柔らかい声が俺のすぐそばで鳴っている。
少し画面が割れた、使い込んだスマホで電話をする、
相手はカナダだ。
*パチリと、何度か瞬きをして話を続けた。
なんの話だったか、確か俺の話だった気がする。
*降り積もる雪の姿を少し見た後、その話をさらに聞き込む。
もう一人格の俺は、まるで子供の様な性格らしい。
その姿は昔を見ている様で、どこか安心したとカナダは語る。
恥ずかしい昔話を語られている様な気になって、耳元まで赤くなる。
*何故、俺はもう一つの人格を持つようになったのか。
そもそも、二重人格とは解離同一性障害と呼ばれるものらしい。
患者は、過去にあった辛い出来事を新しく作った人格に背負わせ、引き受けさせるものが大半らしい。
*過去にあった出来事は、何か特徴的なものであれば俺は覚えるはずだ。
しかし、俺にはその記憶が無く俺自身に「トラウマ」というモノは無いような気がする。
*冬景色が続く。
止む気配がないその雪は、どこまでも深く降り積もっていた。
歩くたびに、ザク、ザクと音がすることを妄想して冬にしか味わえない、この雰囲気にどこか溺れそうになってしまう。
*子供らしいと人が揶揄うような、そんな趣味を持ちたい。無邪気にどんなつまらない事でも笑っていたい。
*真っ黒に染まり切った肺に、更に負荷がかかってしまうな。
そんな思いを持ちながら、未だに煙草を辞めることが出来ない。
そんな所で、俺は子供の純白に憧れたのかもしれない。
*何処かで聞いた懐かしい歌が、頭の中から離れない。
思い出す度、泣き崩れては、頬の腫れが治るまで布団にくるまる。
*過去に聞いた歌なのだろうか、生憎、俺には何故か過去の記憶が無い。
今、ここでもう一度調べた解離同一性障害について思い出す事にした。
確か、過去の思い出を引き受ける“人格”を作ってしまうのがその障害らしいが、一つ気になる部分が存在した。
「記憶が一時的、または長期に渡り失われる事がある」
というモノだ。
確かに、それであれば俺には記憶がないのも確かな事になる。
*凍てつく寒さに今日も凍える。
side-ca
*今日は久々に、彼から電話がかかってきた。
どうやら、彼は彼自身の人格について悩んでいるらしい。
誰かに言われでもしたのだろうか、しかし、どの道、いずれは彼も知るのだから関係は無いだろう。
*僕は彼について深く知っている。
勿論、彼が失った「彼自身の記憶」についてもだ。
*深く口を閉ざす様にしたのは、薄暗い部屋の中、一人彼だけが啜り泣く声が聞こえた事が原因だった。
お父様…、もといイギリスさんは、徹底的な教育を僕達にしていた。
少し間違えれば、馬の皮で出来た鞭が飛んでくる。
*彼は、昔生きるのが下手くそだった。
化身とも言えよう彼は、自らの地位を錯誤し自堕落に過ごすのが日課であった。
僕もいくらか注意したものの、彼は聞く耳を持たなかった。
*イギリスさんはそんな彼を、みすみす見逃す事は無かった。
時には暴力で、時には言葉で。
あらゆる手段を持って、彼を教育したのだ。
*そんな日々の中、彼は致命的な間違いを犯したのだ。
それは、国の化身であったからこその罰とも言えるものだ。
しかし、それらを起こした“化身‘がいるのであればイギリスさんは、間違いなく彼に行く。
…そんな事があったから、彼は傷ついて、彼は蓋をした。
*何のことを言っているのか、分からない人は分からないままで良いのだ。
*…酷く乱暴された彼は、精神共々疲れ果てていて、到底僕が慰め様にもなかった。…いや、僕は慰めたくなかった。
の、方が正しいのかもしれない。
イギリスさんは、いつも徹底していて間違いを犯せば、僕も何をされるか分かったものじゃない。
だからこそ、逃れて、嘘を吐いて。
*ゴメン、とは言う気にはなれない。
吐き気が催す程の、匂いが充満した部屋は僕を擦り減らし、また彼を閉ざすには丁度良かったのだ。
*少しだけ、過ちに後から気づいて、彼の側で歌を歌って上げた時には、時既に遅し。
彼の中には新たなる人格が、存在している事に気づいた。それは後々になってから、ようやく気付けるものであった。
*酷く子供の無邪気さがあって、あの時から時が経った僕は、接しにくかったんだ。
彼はトラウマを、もう一つの人格に背負わせたから、彼の人格は「子供時代」に囚われたのかと思った。
もしかしたら、今の明るい性格こそが彼の新しく作った人格なのかもしれない。
*どちらにしろ、彼は過去を大いに引きずり障害を発症させるまでに来た。
*calling………
聞き慣れたベルの音が、電話から鳴って急いで受話器を取る。
「誰なんだい?」
「私です、アメリカの様子は?」
*イギリスさんの声だ。僕は咄嗟に、息が詰まる気がした、
だって、僕は過去を思い返して、一回でもイギリスさんを、怖がってしまった。
「イ、イギリスさん……あの、……」
盲信するca、トラウマのusa