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とある秘境内…



「止水の矢!」

公子タルタリヤ、旅人、パイモン、それから鍾離が秘境に足を運んでいた。

「ふぅ…特に強い魔物はいなさそうだね。よかった。」

「よくないよ…折角、難関秘境って相棒が言うから着いてきたのに…」

タルタリヤは呆れたように言った。

「そうでも言わないとお前、着いてこないだろっ!」

と、むすっと頬を膨らませながらパイモンが言った。

「先に進むぞ、もしかするとこの先に難関場所があるかもだからな。」

鍾離はいつもと変わらない声だった。

「そうだったらいいけど、もう終わりじゃないか…」

ため息混じりにだらだらと公子が後を追った。


挑戦開始。

「ーーー!ーーっ!」

(魔物の強さは変わんないか…はぁ…)

そんな事を思いながら魔物を倒していると…


…ドッ


何か上から重たい物が落ちた音がした。

ばっと辺りを見渡すと、

「っ!鍾離先生‼︎」

シールドがあったため、最悪の事態は逃れたようだが、右肩辺りを多少えぐっていたようだった。

鍾離に近づこうと走って彼のもとに向かったが、

「ヒヒヒ…」

アビスがなにやら呪文を唱えていたようで、タルタリヤは鍾離を掴もうとしたが届かず、アビスの攻撃が鍾離に直撃した。

「鍾離⁉︎」

少し後ろからパイモンの声が聞こえた。

ぼぅっと鍾離の辺りに煙が広がった。

「っげほごほ、げふっ、クッソ…」

「馬鹿メ、天井ノ軋ム音ニモ気ヅカナイトハ…」

アビスが笑いながらタルタリヤ達から離れた。

「何してくれるんだっ!」

「っせい!」


挑戦成功の文字が出てきた。

あれが最後だったらしい。

鍾離がどこにいるかわからないため、煙の中を手探りで探す。

「先生、どこ?っ、大丈夫?」

煙を吸ったため、咳が出そうなのを我慢しながら鍾離を探していると、小さな手が煙から出てきた、そんな事を考える間も無く、

「だれだ、なをなのれ…っ」

首に槍を向けられ、小さな鍾離に半泣きで問われた。

「せん、せ?」

「鍾離!公子!大丈夫か⁈」

後ろから旅人達が走ってこちらに来ていた。

まだ煙があるため鍾離の姿は霞んで、あまり見えていないのだろう。

「相棒、おチビちゃん、鍾離先生がちっちゃくなった…」

「はぁ⁈何言って…ほ、ほんとじゃないかっ⁈」

パイモンがずっと叫んでるような声で言った。

キッと槍がこちらに近づいてきた。

「なをなのれといっている…っ、さもなくば、っぐず、ころすぞ…!」

「先生多分幼児化しちゃったのかな…記憶も全部。」

「そうみたい…待って待って、分かった!名乗るから!」

だんだん公子の首に槍が迫って来ていた。

「っず…ゔぅ…」

「俺は…えっと…」

(もしかして、この先生の記憶に俺が入るのか…?だったら不味いんじゃ…)

ぐっと槍が少し首に当たったとき、


「私達はただの旅人、彼は魔神を見たことがないから驚いてるだけ。」

旅人が後ろからさらっと言った。

そこにパイモンも乗って、

「あ、あ〜!そうそう、そうなんだよっ」

明らかに嘘だと分かる声色で言った。

だが今の鍾離、モラクスは幼いためか

「…っ、そうなのか…」

とあっさり信じてしまった。

槍が下ろされモラクスの手に戻った時、どさっとその場に座り込んでしまった。

「っ、ゔぅ…」

「大丈夫かい?…結構血が出てるね。止血しようか?」

なるべく優しい声で尋ねた。

「このくらいは、大丈夫だ…っぐす…あと、っ治せるはず…」

自身の肩に手をかざして、岩元素を流し込んでいるようだった。

ずっと涙をぼろぼろ流していた。

「ちょ⁈なにしてるんだっ⁈」

パイモンが焦った声でモラクスの手を肩から離した。

「俺はほぼ元素でてきているから…ぐす、これで治る…っ」

「だとしても痛くないかっ?」

「…っ痛くない…」

ばっとパイモンの手を振り払って、また元素を自身に流し込みはじめた。

ほんの少し涙の量が増したような気がしたため、

「とりあえずここを出ないかい?また襲われたら俺達ちょっと怖いんだ。」

「うん、それがいいと思う。」

「ほら、一回出ようぜ?怪我はちゃんとした所で治した方がいいぞ!病気とかにかかるかもだしっ!」

「びょうきはっ、かからんが…わかっ、た…」

流石に血を流しながら出るのはまずいため、鍾離が着ていた服を取り、止血し、モラクスをおぶって秘境から出た。


「…これ、服も買わないとかな…?」






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