コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「ねぇ、初兎ちゃん!アイス食べよ!」
駄菓子屋を指さして此方を見るいむくん。
「ええよ」
僕はいむくんとアイスを買いベンチに腰掛けた。
「ん〜!!美味しい〜!!」
幸せそうな顔でアイスを頬張るいむくん。
「そうやなー、」
口の中に広がる冷たくて甘いソーダの味。ちょっと冷た過ぎるかもしれないが、暑い今の夏には丁度良い。、こんくらい恋も甘ければいいのにな、。
「あっ、そういえば明日宿題提出やな。イムくん、宿題終わった?」
「えっ!?嘘、宿題なんてあった!?」
僕の言葉に余程びっくりしたのかアイスを落としかける。
「うわぁぁ!?」
「はは、イムくんは相変わらずやな、」
そんなところも君らしい。
次の日、いつも通り君と話しながら教室に向かう。教室の扉を開けると、
驚いた表情で固まるいむくん。
「イムくん、どうしt」
イムくんの机に置かれた花瓶。それがいじめが始まる合図だった。
次の日からイムくんの机、椅子、下駄箱には様々な所に画鋲や虫、死ねと書かれた手紙などが入っていた。
「しょ、初兎ちゃん、」
「?イムくん、大丈夫?なんかあったん?」
どうしたの?という風に何も知らない顔をして聞く。
「うん、。大丈夫!」
微かに目の端にある涙を拭い、心配をかけまいと思ったのか僕に笑いかけるいむくん。
あぁ、早く僕を頼ってくれればいいのに、。虐めを仕掛けたのは僕、君が好きだから。
独占欲っていうんかな?君の笑顔も泣くところも僕だけが見れたらいい。イムくんの友達は僕、、頼れるのは僕だけ。
なぁ、イムくんこのまま僕に堕ちてや、。
ある日、学校の帰り道踏切前で立ち止まる。
「今日も疲れたな、、。はぁ、早く帰ってゲームしたいー」
「うん、そうだねッ、。ねぇ、初兎ちゃん、。あの、さ、」
「んー?」
「僕さ、死にたいッ、」
酷く掠れた声で涙を流すいむくん。一瞬だけ視界に映った手首には無数のリスカの跡が残っているのが見える。
「、なんでッ、?」
震えた声で聞き返す。そんな僕を無視して君は踏切の中へ入ってしまう。遠くから音をたてて、電車が来るのが見える。
「いむくんッ、危ないから戻って来てやッ、。な、?」
なんとかして踏切の中から出てもらおうと必死で説得を試みる。それでもいむくんは出てこない。電車がいむくんの近づいた瞬間、
「ごめんねッ、」
悲しさを含んだ声で笑いながら涙を流した。それが最後の瞬間だった。大きい音と共に目の前を電車が通過する。周りにグシャという鈍い音が響き渡る。こんなはずじゃなかったのに、。広がる血の水溜り、千切れてしまった君と僕のお揃いのキーホルダー。ッ、なんで、なんでなん、。
「なんで、僕を頼ってくれなかったん?」
悲鳴や警笛が響く中、酷く冷たい君の手を握り問いかける。答えなんか返ってくる筈は無いのに。その日僕は見たのは最愛の人の酷く歪んだ死体だった。
キーンコーンカーンコーン_____
9月の始まりをチャイムが告げる。教室のドアを開けると、浴びせられた冷たい水。
「同性愛とか気持ち悪い、」
「稲荷くん、こんな奴せいで死んだんだ。可哀想ッ、」
罵声を浴びせられると同時にあの瞬間を思い出す。最愛の人が死ぬ瞬間を。
「ぅ“、おぇッ、ぁ、はッ、っ」
自分の喉からは嗚咽が、共に目からは涙が溢れ出す。
「は?何泣いてんの?キモいんだけど、」
さらに僕に罵倒を続けるクラスメイト。そんな僕に味方になってくれる人はいない。、君がいない学校には僕の居場所なんてないよ。
日々エスカレートしていく虐め。増えていくリスカ。けらけらと笑うクラスメイトはまるで僕を食べようとする獣のようで、怖くてたまらない。あぁ、君はこんなにも辛かったのか、。なのに、僕が君を独占したいという欲だけで、、。目から涙が溢れる。
「僕はあんなことしなければ、好きにならなければ、君は、、」
「死ななくて済んだのにッ、」
、、
「これで、終わりにしなきゃ、、」
僕は今日命を断つ。君が死んだあの踏切で。踏切の中に入る。音をたてながら電車が走って来るのが見える。あぁ、やっと君の所に行ける、そう思った。その時だった。
「初兎ちゃん」
後ろからもうこの世にいない筈のいむくんの声がした。振り向くとそこには少し透けていて、悲しそうな顔をしているいむくんがいた。
「いむくん、?」
涙で視界がぼやける中、震えた声で名前を呼んだ。透明な君は僕を抱きしめた。
「ごめんね、初兎ちゃん。次は次こそは優しく愛し合おうね」
死んでいるからかは分からないけど君が涙を流しても僕の肩が濡れる事はない。
ただ、“愛し合おう”という言葉は僕が何よりも欲しかった言葉。
「うんッ、」
僕が返事をすると此方を見て笑いながらもう一度僕を抱きしめてくれた。僕はその心地良さに体を預け、目を瞑る。電車が近づいてくる音がする。僕はもう1人じゃ無い。
だって、君がいるから。
君は友達、?