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練習が終わる頃には、川瀬くんはヘトヘトになっていた。
「つ、疲れた……広瀬先輩、スパルタすぎませんか…?」
「そ、そうだね…お疲れさま。」
私はペットボトルを差し出しながら、広瀬先輩の方をちらっと見る。
(やっぱり、絶対いつもと違うよね…?)
先輩は無表情を崩さないまま、部室に戻っていった。
***
帰り道。
今日は広瀬先輩と一緒に帰ることになった。
部活の片付けを手伝っていたら、ちょうどタイミングが合ったからなんだけど…
(……めっちゃ気まずい!!!)
私も意識しちゃってるし、先輩も無言のまま歩いている。
沈黙に耐えられなくなって、思わず話しかけた。
「あの…今日、川瀬くんに厳しくなかったですか?」
「……そうか?」
(いや、そうでしょ!!!)
「なんか、普段あんまり後輩に直接指導しないのに、今日はすごく厳しかったなって思って…」
「別に普通だ。」
(いやいやいや!絶対普通じゃない!)
「もしかして……昨日、川瀬くんと一緒に帰ったの、気にしてたりします?」
そう言った瞬間、先輩の足がピタッと止まった。
(あっ、やば…!)
振り返った先輩の顔は、いつも通りの無表情……だけど、なんとなく気まずそうにも見える。
「……別に。」
「え、ほんとに?」
「……。」
言葉が詰まる先輩。
(うわ、めっちゃわかりやすい!!!)
「ふふっ。」
「……何笑ってる。」
「いや、なんか、先輩ってそういうの気にしない人だと思ってたから。」
「……。」
「でも、もしかしてちょっとだけ…ヤキモチ焼いちゃいました?」
冗談っぽく言ったつもりだったけど、先輩はますます無言に。
(……え、ガチ!?)
「……お前が、後輩と仲良くしてるのが気になっただけだ。」
「……!!!」
心臓がドクンと跳ねる。
先輩の声は相変わらず落ち着いてるけど、少しだけ耳が赤い。
(これ、絶対ヤキモチだよね!?)
「そっか……。」
思わず、ニヤけそうになるのを必死にこらえる。
(先輩、可愛いかも……!)
「……あんまり調子に乗るなよ。」
「えー、乗っちゃおうかな。」
「やめろ。」
そんなやりとりをしながら、家へと向かう。
今日の広瀬先輩、いつもよりちょっとだけ感情が出てた気がする。
(これから、もっと知りたくなっちゃうかも…?)
そんなことを思いながら、私は先輩の横を歩いた。