こんばんは -
新作 で ー す
3話 くらい で ?
完結 の 予定
んじゃ 、 どぞ ー
“ 先輩、今日も好きです! ”
教室の窓際の一番後ろ。
クラスの中でも一番羨ましがられるこの席は私の運を半年分ほど使って手に入れたんだと思う。
今日はいい天気だ。
心地良い風が入る窓の外を見れば1つ上の学年の男子が体育の授業でサッカーをしていた。
あ、いた。
[剣持ー!こっち!]
そう呼ばれた彼は声の主にパスを出した。
じっとしていれば心地の良い気温は、運動すれば汗はかくくらいなのだろう。
彼はボールの行末を見ながら腕で汗を拭った。
私は先輩に恋している。
彼をずっと目で追っていれば視線に気付いたのか目が合った。
嬉しくなって口角が上がる。小刻みに手を振れば前見ろとサインを出される。
仕方なく頷いて黒板を見るけど集中なんてできなくて、その授業はチラチラと先輩の姿を探すことに意識が向いてしまっていた。
授業時間の終了を知らせる鐘が鳴り先生が教室から出ていった。
昼休みだ。
今日は購買のパンが食べたい気分だったからお弁当は持ってきていない。
一緒にお昼を食べる友達は気体調不良で休みだし、つまんないの、なんて思いながら教室を出た。
購買は割と賑わっていて、売り切れていないか不安になったもののなんとかメロンパンを買うことができた。
教室に戻ろうと振り返ると
『あ、剣持先輩!』
想い人が向こう側から歩いてきたから思わず声をかけた。
俺たち先に見てるぞーと先輩のお友達は先に購買の中へ入っていった。
先輩も購買ですか?そう聞けば
「うん、そうしようかなって。ていうか授業には集中しろって」
こっち見過ぎだから、そう言われて少し照れくさくなる。
『先輩!』
「なんですか」
購買へ向かおうとした先輩を引き留めて
『今日も好きです!』
そう伝えればはいはい、ありがとうとだけ返事が返ってきた。
行っちゃった、今日お話しできるのはこれだけかなぁ、なんて考える。
私は剣持先輩を初めてみたあの日、先輩に一目惚れした。
気づけば声をかけて、好きだと伝えていた。
一緒にいた友達にヒューなんて揶揄われてダルそうにしながらも顔を少し赤くしていた先輩の顔はいまだに忘れられない。
「申し訳ないけど、僕君のこと知らないし…」
今とは違い気まずそうに気を遣いながら返事をしてくれた先輩に
『じゃあ私のこと知ってください!これから毎日話しかけます!』
なんて言った過去の自分には自分でもすごい勇気だなと驚く。
でも、それくらい剣持先輩を一目見てこの人だと思ってしまった。
その日を境に私は剣持先輩に夢中になってしまっている。
姿を見れば胸が高鳴って、すぐに先輩に声をかけに行く。
『今日も好きです!』
そう伝えた最初数日はあーとかうーんとかなんて言っていいのかわからないというような反応が返ってきてたけど、それも慣れてしまえば今日のようにありがとうとか、酷い日はうるさいなんて言われる。
それでも私は先輩に気持ちを伝えたくて、伝えないと気持ちが悪いくらいになってしまった。
…正直、何も進展がない現状に悲しいという気持ちが0なわけではない。
それでも、剣持先輩に私の存在を覚えてもらっていて、話ができるという事実が嬉しかった。
つまらないはずだったお昼休みは剣持先輩と話せたという事実だけで楽しいものに変わったし、午後の授業も気づけば終わっていた。
次の日の朝。
学校へ向かって歩いていれば見覚えのある後ろ姿。
『剣持先輩!』
そう声をかければ
「げっ、」
なんて反応が返ってくるから
『なんですかその反応!私に会えて嬉しくないんですか』
拗ねたようにそう言ってやれば
「いや、別にそうじゃないけど、」
慌てた様子でそう返された。
『ですよね、じゃあ一緒に学校行きましょ!』
笑って返せば騙したなと睨まれるけど気にしない。
今日は何の授業があるかとか、2年生は数学難しいですかとか。
学校のことを話しているとあっという間に着いてしまった。
靴を履き替えてそれぞれの教室へ向かう前。
学年が違えばフロアも違うためここでお別れだ。
『あと1年早く生まれてれば同じ学年だったのにぃ』
はぁ、とため息を吐きながら言えば何言ってんのとおかしそうに笑うから胸がきゅんとする。
『剣持先輩、今日も好きです!』
そう伝えれば
「はいはい、今日は授業中よそ見するなよ」
と言って背中を向けて行ってしまった。
今日も何も行ってくれなかったかぁ、そう思うけどいつものことだからそこまで気にするつもりはない。
一緒に学校来れてラッキーくらいに思っていつもより少し軽い足取りで教室へ向かった。
[おはよ]
『おはよ!体調大丈夫?』
昨日休んでいた友人が復活した。
熱が出ていたわけではなく少し頭が痛いから念の為休んだとのことで、今日は全然大丈夫との言葉を聞いて安心した。
今朝の出来事を話せば
[まだあの先輩のこと好きなのか。何も言ってくれないのはどうかと思うんだけどなぁ]
あんただって好きっていうの、全く勇気いらないわけじゃないでしょ、と私を思って言ってくれる。
それでも私は剣持先輩と話せるだけでいいし聞いてくれるだけでいいのなんて返せばため息をつかれる。
【おはよ。】
そんな会話をしていれば同じクラスの伏見くんがきた。
『おはよ!』
彼は剣持先輩と私のことを知っている。
数少ない私の男友達だ。
【お、なんか今日調子よさそうだね、いいことあった?】
そう聞かれれば素直に彼にも今朝のことを話した。
【本当にその先輩のこと好きだよね。てか、その先輩は毎日女の子に好きって言われてなんとも思わないのかな?俺だったら好意向けられたら嫌でも意識しちゃうけどなぁ】
と、言い残して荷物を片付け始めた。
意識、か。
今までの剣持先輩の反応を振り返れば、おそらく私が意識されている可能性は0に近い。
というか、0だ。
好きだと言われてはいはいなんて返事があるか。
私がしつこくしているからという理由を加味したとしても、あまりにも意識されていないことを痛感してしまい凹んだ。
その様子を見ていた友人は
[あんたも少し、別の人を見てみてもいいんじゃない?]
と言って携帯をいじり始めた。
別の人かぁ。
剣持先輩しか見ていなかったが割とうちの学校は美形揃いだと思う。
実際伏見くんだって背が高くて明るくてイケメンだし。
それでも剣持先輩じゃないといけない理由が私にはあるけど、先輩はどうだろう。
先輩にも、もしかしたら好きな人とか、いるのかな。
だとしたら、今私は先輩の邪魔しかしてないんじゃないか、マイナスな考えが頭を巡る。
先輩のことをぐるぐる考えていれば失敗ばかり。
散々な1日だった。
授業中先生に指名されて答えられなくて恥かくし、購買のパンは売り切れてるし、掃除の時間にはゴミ捨てに来た体育館の裏で段差に躓いて膝擦りむくし…。
血が出ている膝を眺めながらその場に座り込んだ。
あぁ、ついてない。
これも全部良い席引いちゃったからかな、なんて何か理由を探した。
{好きです…!付き合って!}
ふとその言葉が聞こえて顔を上げる。
きっとこの壁の向こうで誰かが告白してるんだ。
人の恋バナとかはだいぶ好きな方。
膝の痛みなど一時的に忘れてそっと息を潜めながら壁の向こうを覗いた。
「あー、ありがとうございます。でも、ごめんなさい。」
聞き慣れた声と共に目に飛び込んできたのは大好きな剣持先輩の姿だった。
カヒュっと小さく情けない音を立てて息を呑んだ。
どうやら先輩は断ったようだ。
お相手は上履きの色からして先輩と同じ学年の人だ。
綺麗な人、そう思った。
{そうだよね、ごめんね、突然呼び出して。}
悲しそうにそう言った女の人に対して剣持先輩は
「いえ、お気持ちは嬉しいです。」
気まずさは感じられるものの感謝の言葉を伝えていた。
{答えられる範囲でいいんだけど…好きな人とかがいるから、?}
恐る恐るその質問をした人物は剣持先輩を今にも涙が溢れそうな目で見つめて答えを待っていた。
息をすることを忘れた。
好きな人、いるのかな。
盗み聞きしていいのかな、ダメだ、そう頭によぎった瞬間、膝の痛みを思い出し思わず蹲った。
その瞬間、
「はい、います。」
その言葉と共に誰かが走り去った音が聞こえた。
あぁ、好きな人いたんだ。
彼女の告白に丁寧に対応している先輩の姿を見て、自分と比較してショックを受けてしまわないよう気づかないふりをしていたけど、その言葉が聞こえた瞬間涙が溢れてきた。
もうやめよう、先輩に好きだって言うの。
そう思った。
「何してるんですか。」
『えっ、』
声がして驚き顔を上げれば剣持先輩が目の前にいた。
「え、泣いてる?って、その怪我どうしたんですか」
私が泣いていることに気づき一瞬ギョッとした反応をした後、膝の怪我を見てしゃがみ込んで心配してくれている様子の先輩。
私が泣いている理由を痛いからだと思っているのか、転んだの、歩ける?保健室まで送るから泣くな、そう言われた。
さっきのを聞いていたなんて思っていないのか、保健室に向かう間もゴミ捨てで転ぶなんて鈍臭いななんて揶揄われるからうるさいですと精一杯の抵抗を見せた。
保健室の扉には職員会議で不在と札がかかっていた。
先生はいなくて、そこに座ってと言われて先輩が消毒液やガーゼを探してくれた。
「はい、足出して。」
『いや、自分でできます、』
「いいから。」
少しだけスカートを上げて待っていれば染みるかも、なんて言われながら消毒液がかけられる。
案の定染みて『いた、』そう言いながらビクッと反応してしまう。
揶揄われるかなと思ったけど
「痛いよね、ちょっとだけ我慢して」
なんて予想外の優しい言葉が返ってくるからまた泣きそうになるのを堪えた。
丁寧にガーゼを巻いてくれた先輩はできたよと言って傷の部分を優しく撫でた。
『ありがとうございます、』
礼を言えばなんか元気ないの気持ち悪いな、いつもはうるさいくらいなのに、なんて言って笑うから好きを実感してしまう。
『なんですかそれ、私うるさくないですよ、多分!』
それだよ、うるさいのそう言って笑うから顔が赤くなったのを感じた。
これが、最後。そう思って口を開いた。
『先輩、本当にありがとうございました。…今日も好きでした!』
できるだけ笑顔でそう言った。
「わかったから、もう帰るよ。」
最後まで返事はもらえないかぁ、そう思いながらも立てる?と差し出された手を見てみぬフリして立てます!と言って立ち上がった。
すっと下げられた手は少し居心地が悪そうに先輩の腰に当てられていた。
「じゃあ僕職員室に用事あるから。」
教室まで送ると言われたが大丈夫だと断って別れた。
最後まで何も進展なかったなぁ、なんて自分のことなのに他人事のように思えてしまうのはきっと傷つきたくない防衛本能が働いてるからだろう。
教室に戻って荷物を持ち家に帰った。
おかえり ー
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