―注意―
苦手な方は各自自衛をお願いします。
最近の夜の帰り道、誰かが付いてきている気がした。あっちは別に何もしてこないので無視をしていた。そして今、後ろから歩く音が一つから二つに増えた気がした。確実に。少し怖くなり足を早める。それと同じくあっちも足が早くなる。一歩、二歩、歩き後を振り返っても誰も居ない。いざ走ろうとした時、突然後ろからドゴッ!!と何か硬い物で頭を殴られた。
「ぅ゙ッ…?!」
その殴られた反動で床にバタッと倒れる。どうやら KOZAKA-C や OKOGAMA-C でも無いようだ。どこかの敵なのかもしれない…。すると男二人の内、一人がオレの腕を拘束し、 もう一人がオレの口の中にえげつない量の謎のクスリをたくさん入れ、直ぐに水を沢山注いで無理やり飲ませようとさせている。勿論、抵抗はしたかったがこの現状では手も足も出なかった。クスリを飲まされた後、そのクスリの作用か、はたまた頭を勢い良く殴られたせいかは分からないがどちらかの効果のせいでオレの意識は吹っ飛んでしまった。
遅い…。遅いな。今日は大事な会議がある。星導やカゲツ、俺は集まったが伊波だけ全く来ない。寝坊か? それにしても現時刻は21:00過ぎだ。会議開始の15分は経っている。いつもの彼なら大体5分前にはもう既にいるはず。だが全く来る気配がない。
「なあ、伊波は」
「知りませんねぇ」
「知らん、にしてもアイツ遅いな」
「何かあったのかもしれませんね」
「だとしてもアイツなら連絡くらいはするだろ」
「だとしたら緊急任務とか?」
「それはありえへんと思うな」
「それじゃあ……拉致とか?」
「は?」
「最近お客さんがよく話題に出すんですよ」
「自分の身内が拉致されたとかで、その共通点が人間であること、そして警戒心が無さそうな人などらしいですよ」
「それやん」
「星導、それはどこらへんだ?」
「知りませんよ、世界中から来ているものですから」
だとしたら結構まずい。しかも仲間が拉致されたかもしれない状況でなんでこの二人は冷静なんだよ。俺がおかしいのか? いや、でもアイツらも内心大焦りしそうだしな…。とりあえず伊波の居場所を突き止めないと…。
「お前ら伊波のデバイス位置確認できたか?」
「んー…」
「わからん」
「拉致だとしても居場所の特定が…」
「…あ、俺そういえば興味本位でライにGPS付けてたんだった」
「は?!お前それ早く言えよ、!」
「それでどこなんや?」
星導は位置確認の画面を出し見せる。3つ点が集まっておりその少し遠くの方に山がありそこに1つの点がある。恐らく、3つの点が俺達で離れた場所にある点は伊波の居場所なのだろう。
「これ、結構な山奥じゃ」
「あー… なるほど」
「そこはまっずいわ」
「なにかあるの?」
「山奥だから伊波は簡単に抜けられないと思う。それに加えて、そこ監獄やね」
「ぅ゙ッ…ぁ”ッ”……」
「こプッ… カハッ……. おえ”ッ゙……..」
ピチャッポタッ
痛い。ODのせいで頭は痛くてぐわんぐわんするし、これ以上出せないのではと思うくらい吐く。それと共に血も出てくる。痛すぎるがあまり、涙が止まらない。無表情、無感情の警備員に上着を脱がされる。手足の拘束も怠ることはなくキツく縛られ、 重りも付けられ現在進行系で踏まれたり殴られたりされている。だがその警備員はDyticaの情報を教えろとしか叫ばない。敵側はオレに情報を吐いてもらいたいので殺しはしない。が、それが苦痛なのである。死ぬ寸前までボコボコにし、少し回復させてからまた殴って、蹴って、踏んで、脅して情報を吐かせようとする。
「はッ゙……う”ぐッ゙…..」
「ヒッ… カヒュッ …」
オレが痛みに必死に耐えていると、別の警備員が注射器を持ってくる。その注射器を迷うこと無くオレの腕に一本、二本と刺していく。その注射器の液体は即効性なのか直ぐに身体全体に効果が出る。初めはドクンドクン、と心臓が高まるだけであったが今度は口、足、手が痙攣し始めた。震えが激しくなる一方、またオレの意識は吹っ飛んでしまった。__が、今回は意識が飛ぶことは許されないようで。直ぐに身体の至るところを殴られ、蹴られ、踏まれ半強制的に叩き起こされる。もう嫌だとさっきよりも涙がポロポロと溢れる。次の瞬間、オレの周りにいる警備員が次から次へと血を出して倒れていった。すると黒く長い靴が見える。誰だろう… 新しい敵かな…。そう思っていた時、いつもの低くて落ち着きがあり馴染みのある、あの大好きな声が聞こえた。
「ライ、もう大丈夫だ」
「ッ…ぁッ…ろぉ…ッ…?」
「そうだ…拘束具外すから力抜け」
「…ふ…ッ」
「解いたぞ…立てるか?」
「んーん…ッ…」
数秒の間があった後、突然身体が宙に浮いた。いわゆるお姫さま抱っこと言うものだ。
「え…ッ…?」
成人したばっかのオレには恥ずかしく、むしろプライドというものもある。が、ロウはそんな事は気にもしていなく軽々と持ち上げる。
「… もう泣くな」
「…ッ…泣いてない」
「嘘つけ、とりあえずいいから寝とけ」
「…やだ」
「まだここで寝たくない…ッ…」
「…はぁ……」
ロウに呆れられたかと思えばオレをぎゅっと抱き寄せる。ロウの心臓の音がトクットクッ、とする。オレは安心したのかロウの胸を借りて寝てしまった。
少しするとライの寝息がすぅすぅ、と微かに聞こえる。辛かっただろうに。そういえば星導とカゲツに報告するのを忘れていた。
ザザッ……
『報告、ライを見つけ保護した』
『ナイス』
『こっちも倒したので後は帰りましょ』
『了解』
ザザッ……
「はー…」
ライを見つけた時のあの現場はこれから一生記憶の片隅に置かれるのだろう。逆に誰があんな酷い場面を忘れるのだろうか。俺は着いた時、絶句してしまった。何百回も任務などをこなしていたとしてもあれは酷い。ライはガタイの良い屈強な男達に囲まれ、殴られ、蹴られ、踏まれ。それらのせいで出血も酷く更には数本の注射器が転がっており、大量のクスリも散らばっていたのでODも確実だ。それで嘔吐をしてしまった跡もあった。実際にその場面は見てはいなかったがこの有り様を見れば誰でもその前は分かる。兎に角これからはHEROES、特に人間の奴らに加え見た目からして幼そうなライを厳重警戒しておこう。
「あ、小柳くん」
「お、」
「うわー…」
「伊波重症どころやないね」
「さっき現場を見たけど確実にODされているから今後の精神状態が心配だな…」
「あー… ライは頑固ですし危険ですもんね」
「そうだな」
「…伊波泣いたん?」
「おん、寝るまでずっと泣いてた」
「目絶対腫れるやろ」
「まぁ、それは帰ってからどうにかするか」
「そうやな」
「じゃ、早く帰るか」
「はーい」
あの事件から何日経ったのだろうか。あの日を境に伊波は目を覚まさない。しかし呼吸はあった。Dyticaの3人で交代ずつ伊波の様子を見に来ている。いい加減目覚めてくれないか、このまま死なないでくれ。こんな人間二度と会えない。それくらい伊波が俺に衝撃を与えたことは数え切れないほどある。普通のただの人間なはずなのにどこか違う気がした。ヒーローになる為に生まれてきたかのように属性がピッタシ合っていた。特に伊波はコミュ力や場を明るくさせたりするのが得意だから星導、カゲツ、俺のような暗い奴らが3人居ても、伊波1人だけで雰囲気も明るくなる。そしてまだまだ沢山あるが兎に角Dyticaには必要不可欠な存在なのだ。伊波が居ない時のDyticaは地獄かのように暗い。お願いだ。どうか一刻でも早く目覚めてくれ。その願いが叶ったのだろうか。伊波の手がピクリと動いた。
ガタッ
「ライッ!」
「…ン…ぁッ…ろぉ…ッ…?」
「そうだ」
「ぁ…、ありがとね」
「…、全然」
「そんなことより大丈夫か?」
「うん……ねぇ…ロウ……」
ライが俺の名前を呼んだ時、突然ライから力弱くハグされた。
「怖かったよ…ッ…」
ライはボソッと呟くように言う。それはまるで小さな子供がグッと我慢して泣くように見えた。俺は無意識に頭を撫でる。
「もう大丈夫だから、な?」
「泣くな…」
「むり…ッ…」
「近くに居てやるから」
ライは更に泣き始めたのか俺の胸に顔を埋める。そんなライを俺は抱きしめ落ち着かせようとしていた。それにライは落ち着いたのかまた安心して眠ってしまった。するとスライド式のドアから星導とカゲツがやってきた。
「小柳くん、ライにそんな甘かったんですね」
「相思相愛やん」
「別に良いだろ、あくまでコイツはつい最近まで一般人だったからな」
「…人間毛嫌いしてたのにw」
「それは昔の話な?」
「昔?」
「どぼけんなよ…、はあ”ー……」
「….にしてもホンマに珍しいなあんな人に頼らないヤツがこんなんなるなんて」
「ほんとそれな」
「ライODのせいで夢の中で幻覚とか見てそう」
「コイツ苦労人やな…」
「元一般人にしては良くやるよ」
「…….ライ赤ちゃん見たいな顔で寝るんですね」
「確かにそうやなwww」
「寝る時だけ0歳なの草」
「え、お前らライの寝顔見たことねぇの?」
「そりゃね、夜番は小柳くんだし」
「普通に生活してたって俺が深夜帰ってきた時もライは毎回起きてますよ」
「体力バケモンすぎやろ」
「….それっていつ頃?」
「え、最近ですよ」
「あー… ならそれくらいの時期から敵側に目を付けられてた可能性あるな」
「まぁ、倒したからええんちゃう」
「それはそうとして今回のこと含めライの周辺には充分警戒するように」
「了解です」
「了解、」
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