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「え」
「僕だけのタロになってくれませんか」
練習を終えて宿舎に戻る前、買い物に行こうってタロに声をかけた。ふたりきりのタイミングを狙って。
コンビニでちょっとしたおやつとジュース、雑誌なんか買って、景色を見ながらぶらぶら帰る途中。
まだたどたどしさの残る韓国語を話すタロがとてもいとおしく感じて。
付き合って、と言った。タロはいいよ、と笑う。
ああ、こんな感じに出かけるとか、そういう意味で取っているんだろうと思った。
そうじゃなくて、と言うと、タロは足を止めて僕を見上げた。
え、と驚いて見上げる顔が可愛くて。
はっきりと口に出してしまった。
僕だけのタロになってほしい。みんなの前では難しいけど、ふたりだけの秘密でも。
「それは……どういう意味なの、ソンチャン」
「言葉の通りの意味」
タロは笑顔を貼り付けたまま明らかに困惑してる。
「んー……、よくわかんない」
「恋人になって欲しい」
目を丸くして僕を見る。どんな仕草も表情も、僕にとっては一瞬一瞬が大切で可愛いタロ。こんなに惹かれているなんて自分でも気付かなかった。
「んーと……、僕たち、今この状況じゃん」
「うん」
「仕事しながら、そういう関係ってちょっと難しいと思うんだよね」
「わかってる」
即答する僕に、タロは笑いながら本当かなあ、って言う。
「ただ、少しだけ僕の我儘を聞いて欲しい」
「……うん」
「誰よりも一番に、タロを好きでいさせて欲しい。心配させて欲しい」
タロは僕を見上げて頷く。
「タロが辛い時、悲しい時、嬉しい時、楽しい時、いつもそばにいたい。……返事は、すぐじゃなくていいから」
その日はたわいない会話をしながら帰った。言うだけ言ってスッキリしたけど、本当はずっと緊張していた。