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Ⅶ
-日にちを跨いだが、甘ちゃんはまだ目覚めていない。
日が、落ちても。
甘ちゃんは、目覚めない。-
僕は、知らない場所にいた。
地面が、ふわふわしている。
まるで、雲の上にいるみたいだ。
でも、真っ白な何かしか見えない。
歩いてみる。
でも、本当に進んでいるのかがわからない。
ひたすら、前に進もうとする。
でも、変わらない。
チリン、
『え、』
急に、猫が現れる。
白い毛に黄色い目。
この子を、どこかで…
白い猫は、歩き出す。
なんとなく、後を追いかける。
僕は、
死んだのかな…
ここは、あの世?
何もわからない。
身体が軽い。
浮いてしまいそうなほど軽く感じる。
そうか…
僕は、琥珀さんのことを考える。
大丈夫だろうか、
琥珀さんのことを考えるだけで辛い。
と、
猫が立ち止まり、こちらを見た。
周りを見てみるが、景色は何も変わっていない。
チリン
『あ…』
僕は、目を見開いた。
目を、疑った。
鈴のような音が聞こえた瞬間、
目の前に、女の子が現れた。
いや、違う。
猫が、女の子に…
『こんにちは。』
『え?』
女の子が、挨拶をしてきた。
僕は、戸惑っていた。
一体、何が起きているのか、
白い髪に黄色い目、
猫のような耳と尻尾。
『大丈夫?』
『あ、うん……』
しばらく経っても、冷静になれない。
『私はましろ。』
『あ、あぁ…』
『ここは、私の部屋。』
真っ白な、この空間が?
この子の部屋?
ようやく、少しずつ冷静になってきた。
『僕は、銅.甘。』
『知ってる。』
え、
僕の名前を知っているのか?
この子は一体、何者なんだ?
『私は、アマをずっと見てた。』
『・・・』
よくわからない。
『アマの肉体にはひどい損傷がある。』
あぁ、あの傷か。
『本当なら、もう…死んでる。』
っ!
しん…でる?
『アマの魂を、一時的に連れてきた。』
?
なにがなんだか、
『傷が治れば、アマの魂を戻す。』
治ればって…
『傷は治るのですか?』
『治る。私が、治療してる。』
『え?君が治療をしているのですか?』
『はい。治癒魔法を使っています。』
ま、魔法?
なんのことだ?
『魔法が、使えるのですか?』
『はい。』
・・・
『あと、敬語ではなくていい。』
『あぁ、うん…』
訊きたいことがたくさんあるけど、なにからどう訊けばいいのかがわからない。
『わかった。』
『え?』
『アマの考えていることはわかる。』
‼︎
『な!』
『耳と尻尾は気にしないで。』
そう言われても気になる。
耳も尻尾も、動いている。
『はい、私の身体についているので。』
そう言って、耳と尻尾を大きく動かした。
『あと少しで治る。治れば戻れる。』
そうか、
『魔法は、人間には使えない。』
あぁ…
ちょっと残念だ。
って、どんどん心を読まれている!
『恥ずかしいことではない。』
恥ずかしいよ。
失礼なこととかありそうだし…
『失礼なことはなにもない。』
やめてぇ!
『はい、やめます。』
『・・・』
うーん、
『えと、まだ状況が飲み込めないんだけど、助けてくれてありがとうございます。』
『いえ、大したことではない。』
ほんとなら死んでいたはずなのに、助けてくれたんだ。
『どうして、助けてくれたの?』
『アマが、正しいと思ったから。』
よくわからない。
『ごめんなさい。言葉は苦手なので。』
『あ、いえ、気にしないで。』
『ありがとうございます。』
でも、もう少し訊きたい。
『えと、僕が正しいってどういうこと?』
『アマは人の中で、いちばん正しいと思った…から。』
それは…
『僕は、間違えたよ。大事で、辛い思いをしたあの子に、自分勝手なことを押し付けて傷つけたんだ。』
『アマは、間違えてない。』
そんなことは…
『助けなければ、あの子が死んでた。』
っ…
『アマが正しい。』
『でも、本人に言われたんだ。僕のしたことが一番辛いって。』
あの言葉が、僕にとって辛かった。
『助けなければ、もっと辛いことが起きてた。』
『でも…』
『自分を犠牲にするのは難しい。』
『・・・』
もう、わからない。
『それはアマに、昔の記憶がないから。』
そう、か…
『少しなら、夢で見たこともあるけど…記憶は、まだほとんどないみたいなんだ…』
だけど、
その記憶はきっと、辛いことばかりなんだろう。
だから…
『治療が終わるまで少し、見せる。』
『え、』
見せる?
一体、何を…
『アマの脳に悪いから、少しだけ。』
記憶を?
それは…
少し、怖い。
『でも、アマには必要。』
『っ…』
僕は身構える。
どんなことが待っているのだろう。
いや、
どんなことをしてきたのだろう。
意識がどんどん遠くなる…
『ばいばい、』