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「んぐ…」
カーテンの隙間から射し込んだ朝日で目が覚める。ぐっすり眠っていた所為で気が付かなかったが、どうやら誰かから着信が来ているようだ。
「あー…っと?…いたずら電話か?」
携帯の画面を見て相手を確認する。だがそこには知り合いの名は無く、知らない番号が表示それていた。
「んー、出なくていいや」
誰かの着信を無視し、寝間着から着替えると今日も横浜へ散歩に出掛けた。
出店で買った鯛焼きを貪り食いながら散歩をしていると、どこからか銃声が聴こえた。
「おー…真っ昼間から仕事熱心だねぇ。感心感心」
少し愉しそうに微笑むと腰に差していた刀を抜き、軽やかな歩調で路地裏を進んで行く。
暫く進むと、先程の銃声の元であろう場所に辿り着いた。
「ッ…一般人!?」
「こんにちわー」
驚いた金髪のお姉さんに銃口を向けられた舞はにこやかに挨拶をする。
「お姉さん、マフィアの人でしょ?…ほっぺ赤いけど大丈夫?」
「…大丈夫、です」
そのお姉さんの片頬が不自然に腫れていたので指摘すると、お姉さんは頬を抑えて目を伏せた。
「うーん…良くわかんないけど、顔は大事にね。お姉さん、美人だし」
「へッ…?美人…!?」
「ありゃ」
恥ずかしかったのかお姉さんは真っ赤になってしまった。
しかしその一方、舞が来たことに気付かないくらいの激しい喧嘩が奥で繰り広げられている。
「ふー……異能力『百花繚乱』」
「…!!」
二人の間に割って入り、異能力を使って喧嘩を止めるとその子は漸く気付いた様で固まっていた。
「久し振りー、元気してた?芥川君」
「…舞、さん……?」
舞が居る事が信じられないのか驚いた表情をしている。
「お、矢っ張りこの子人間か」
先程までの白い虎が人間に黙りこくっている芥川を放置して私って天才では?と、心の中で自画自讃をしていた。
「…舞さ……」
「まーいちゃん♡」
芥川が話を切り出そうとしたその時。狙ったかのように奴が肩を抱いてきた。
「暑苦しい。離せやド阿呆」
「やーだ♡」
鬱陶しそうに抵抗する舞とは対照的に、太宰は満面の笑みで舞を離そうとしない。
面倒になった舞は抵抗するのを止め、芥川に向き直った。
「はぁ…久し振りに会えたのにごめんねー」
「……いえ」
そんなにもあからさまに落ち込まれると何だか申し訳なくなってしまう。
「…鯛焼きいる?」
「いえ…」
最後の一個だった鯛焼きをあげようとしたが、断られたので口の中に放り込んだ。
すると、太宰は舞を離したかと思うと芥川と話を始めた。
「ちぇっ、自己中な奴め…」
ぶつくさ文句を言いながら、応急処置だけでもと怪我人の側にしゃがんだ。
「よーし、こんなもんで良いかな」
虎の子と谷崎兄妹に応急処置を施した。治している間、ふと与謝野女医の仕事を奪ってるのでは?と心配になったが、お節介という事で許してもらおうと暢気に構えていた。