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近くのコンビニでビールやチューハイを何本か買い、航太のアパートでそれらを広げた。
思ったより小綺麗な部屋に、リカは虚を突かれたように部屋を見渡す。
十畳ほどの部屋にシングルベッドとローテーブル。
その二つを仕切るように置かれたチェスト。
「どうした?」
「小野先輩、部屋綺麗ですね」
「そうかぁ? いつでもリカちゃんを呼べるように掃除してたんだ」
「あー、はいはい。そうやっていつも女子を連れ込む、と」
「失敬な! そんなことはしねーよ。リカちゃん、俺のこと遊び人とか思ってるわけ?」
「そういうわけじゃないですけど、モテそうな気はしますね」
「えっ……初めてリカちゃんに褒められた気がする」
「えっ? 別に褒めてないですよ?」
リカはぶんぶんと手を横に振る。
そんなリカの態度に「リカちゃん相変わらず冷たい、ぐすん」と航太はテーブルに突っ伏した。
リカは自分でもわかっている。
自分は冷たい人間なのだと。
あの時、――淳志との初めてでショックを受けた以降、リカの中から何かがすっぽりと抜け落ちてしまった気がしている。
それが優しさだったのかはわからない。
けれど、どうにも一歩引いた目で見てしまうというか、何事にも冷めた目で見てしまうのだ。
――「またしたくなったらいつでも誘ってよ」
――「うん、今日はありがとう」
あの時のリカのように、人はみな嘘をついて生きているのだろうと。
本当のことなんて少しもありはしない。
今だってこうして航太と楽しくしゃべっている。
それすらも偽りのような気がしてくる。
何が本当で何が嘘か、今の自分は本当の自分なのか偽りの自分なのか。