———かつて、異能は“神の贈り物”と呼ばれていた。
起源は定かではない。語られるのは、断片。ある者は「天から堕ちた星の力」と言い、ある者は「古き神々の呪い」とした。
だが、確かなことが一つだけあった。
異能は、世界を変えた。
最古の記録によれば、異能が確認されたのは紀元前200年ごろ。
ユーラシア大陸の片隅に生まれた“火を操る男”が、たった一人でエジプトの軍勢を焼き尽くしたとされる。
だが、それは“異能”という概念が広く知られる以前の話。
真に異能が歴史に刻まれたのは、“異能大戦”の勃発によってだった。
西暦1086年、異能者たちが同時に覚醒し、国々は混乱に陥った。
争いは次第に激化し、非異能者たちはただ恐れ、祈ることしかできなかった。
その戦いの中、初めて“異能演舞”が発動されたのは伝説となっている。
“異能演舞”——それは、異能と使用者の関係を“物語”として具現化する最終段階。
異能演舞を最初に使ったのは、放浪の賢者であった。
彼は「千夜一夜物語」をモチーフとし、異能を昇華させた。彼の物語は終わらない夜を舞台とした幻惑の世界。
そこでは時間すら意味を失い、戦いは永遠に続くとされている。
——しかし、異能演舞には大きなリスクがあった。
「一つの場所で複数の異能演舞が発動した時、世界はバグを起こす。」
その現象は“混沌の誕生(カオスジェネシス)”と呼ばれる。
物語が干渉し、互いの法則が衝突することで、現実世界に異常なエネルギーが溢れ出す。
その結果、空間がねじれ、時間が崩壊し、時には存在そのものが失われることさえあった。
——大戦の終結は、西暦1220年。世界が壊れる寸前で、異能演舞の使用は厳重に制限されることになった。
それから幾世紀もの間、異能は歴史の影に隠れ、密かに受け継がれていった。
——だが、再び歴史は動き出す。
霧島が異能演舞を発動したことで、封印は揺らぎ始めた。
長きにわたり沈黙していた力は、再び世界を混沌へと導こうとしていた。
そして今、異能史に新たな章が刻まれようとしている。
——それは、終焉か。あるいは、新たなる創造か。
この物語の結末を知る者は、まだいない。
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