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西暦875年。中国・唐王朝末期、歴史は炎と血に染まった。
黄巣の乱——農民反乱でありながら、異能史においても重要な出来事である。
公式の歴史書には「塩の密売人であった黄巣が反乱を起こし、一時支配した」と記される。だが、それは表向きの話にすぎない。
——真実は、異能者たちの戦争だった。
黄巣自身が異能者であったという記録は、限られた文献にしか残されていない。
彼の異能は“血花繚乱”。血を撒き散らし、花弁のように舞わせることで、敵の肉体と精神を蝕む恐ろしい力である。
この異能は攻撃能力にとどまらなかった。彼らは己の力を過信し、恐れを知らぬ狂信者と化した。
黄巣の軍勢はわずか数千人で始まったにもかかわらず、異能の力によって瞬く間に数十万の規模へと膨れ上がった。
しかし、黄巣の背後にはもう一人の異能者がいた。
——雨宮冥鳳(あまみや めいほう)。
冥鳳は“鏡天映舞”という異能を操る。反射し、真実さえも歪める力。彼は黄巣の軍師だが、実際には彼も異能演舞を狙っていた。
——そう、黄巣の乱は異能演舞の実験場だった。
“血花繚乱”と“鏡天映舞”。
二つの異能がぶつかり合った瞬間、世界は“バグ”を起こした。
長安は紅と銀の光に染まり、空は歪み、現実と幻想が交錯した。その中で、異能演舞の伝染効果が発動。
各地の隠れた異能者たちが次々に覚醒し、唐全土は混沌の渦へと呑み込まれていった。
歴史書に残る「黄巣の乱の激化」とは、この異能暴走によるものだった。
最終的に、異能の暴走は“混沌の門”の出現を招く。これは、異能が高まった結果、現実世界に開かれる異空間への裂け目だ。
だが、雨宮冥鳳はその門を閉じることなく姿を消した。
——そして、黄巣は敗れた。
公式には「唐軍による鎮圧」と記されるが、実際には暴走による自壊だったとされる。
黄巣は自身に呑み込まれ、血花の嵐と共に消滅した。
黄巣の乱は、異能演舞の脅威を世界に知らしめた最初の大事件である。