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よえの記憶

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よえの記憶

1 - 前半

♥

3

2025年01月28日

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⚠︎すおさく⚠︎


・捏造有り

・死ネタ


最初に投稿してある注意事項を確認してからこちらをどうぞ。お手数お掛けしますがよろしくお願いします。

読まない場合は自己責任でお願いします


※誤字脱字に関してはご了承ください。

発見時は一報頂けると幸いです。








「桜君、今日はどこ行こうか?」

「…」


また無視だ。

昨日から口を聞かないどころか目すらも合わせない。何度かこっちを向いてくれるだけでもと思い好きだよ、今日も可愛いね。いつも頼りになるよ、なんて。

それでも彼は目を合わせるどころか赤面すらしない。想いが一方通行のような状態だ。前までは好きだよなんて言えば馬鹿じゃねえのと言いたげな顔を赤くしながらこっちをにらんできた。少し悲しく思いつつも思考を切り替える。



暫く歩いて見えてきたのは趣のあるカフェだった。長い年月色んな人達に愛されてきただろう温かみが伝わってくる。


「ここ、一緒に来ようと思ってたとこなんだ。紅茶が美味しくてね、桜君も気に入ると思うよ」


扉を開けるとカランと控えめな音がする。珈琲の匂いに混じり微かに感じる茶葉の香り。気持ちを落ち着かせてくれる。 桜君はどうだろうかと思い見てみれば少し無くれてる気がしなくもない。それでも着いてきてくれるあたり優しさを感じてつい笑みがこぼれた。

少し待っていると 店員の人に席を案内された。 とりあえず飲み物でも頼もうかとメニューを開いて眺める。桜君でも飲めそうなものは…あれ?


「桜君、選ばないの?じゃあオレが選んでもいいかな?」


桜はと言うとメニューも開かずただじっと一点を見つめている。やはりまだ一緒に出かけるのは嫌だったのだろうか。様子を伺うも本気で嫌がってる風には見えない。気を逸らそうと先程見つけた桜君が好みそうなものを提案してみる。 反応は無いもの野菜を出した時のような嫌悪感は滲み出ていないためきっと大丈夫なのだろう。

食べ物は後でもいいかと思い先にベルを鳴らす。一分に満たないうちに先程案内してもらった店員さんとは別の人、見た目からして学生、バイト生なのだろう。こちらを見て顔を少し赤くしているがスルーさせてもらう。あのお兄さん…と開きかけている口を横目に注文をする。


「ダージリンとアップルで…桜君はりんご大丈夫だったよね?甘いから飲めるとは思うんだけど…」


え…?


戸惑いを隠せないといった声が聞こえる。疑問に感じたものの聞こえなかったフリをしてじゃあこれで、と言い終えてから店員の方を見れば怪訝そうな顔をされる。様子を見るに遮ったことに対しての反応では無さそうだ。何故そんな顔をしているのか、それ以外で何もおかしなところは無かったはずだ。

そんな探るような蘇枋の視線に気付いたのか気付いてないのかはっとしたような態度で注文を取った。


「あの、なにか…」

「い、いえ!ダージリンのファーストフラッシュとアップルティーですね。暫くお待ちください」


挙動不審さ全開で厨房へと戻って行く後ろ姿を眺めた。なにかしてしまったのだろうか。確かに遮ってしまったのは感じが悪く思われてしまうだろう。しかしせっかくの桜君とのデートだ。あまり邪魔はされたくない。桜君はというと相変わらず変わらない様子に思わず苦笑した。



「お待たせいたしましたー 」


その言葉と共に頼んだものが目の前に置かれる。一方を桜君の方へと差し出しにこりと微笑む。それにも反応はなくムッとした表情をしている。いつこちらを向いてくれるのか、過去の記憶が懐かしいとすら思ってしまう。

そもそもあの日は何が理由で喧嘩したのだろうか。上手く思い出せない。

沈みかけていた思考に入ってきたごゆっくりどうぞという言葉に意識が浮上する。桜君と喧嘩をした日から耳鳴りに似た感覚と膜に覆われているような居心地の悪さがして自分が分からなくなる時がある。

記憶が”塗り替えられた”みたいだ。



どうして。




「おいしかったね」


「いつもより手が進んでなかったけどあまり気に入らなかったかな?また次」

「蘇枋さん!!!!」


後ろから急に聞き覚えのある声で自分の名前を叫ばれたことに驚きつつも振り返る。

懐かしいな・ ・ ・ ・ ・

そう思ったのも束の間、オレを呼んだ彼は険しい表情でどんどん近付いて来て目の前まで来たかと思えば急に胸ぐらを掴み頬に殴りかかって来る。反射的に寸前のとこで手の平で受け止めはするも突然のことに目を白黒させてしまう。


「に、にれ君?どうしたの、オレ…」


何かしちゃった、そんな言葉が続くはずだったのに彼の顔を見れば自然と口を閉じていた。どうしてそんな泣きそうな怒ったような、そして安心した顔をしているのか。

今日何度と感じたどうしてという感情。

楡井は本当に分からないといったオレの表情に気付いたのだろう。一度落ち着こうと飲み込むような仕草を見せた後口を開いた。


「まず元気そうで安心しました…それなら連絡ぐらい返してくれれば」

「え?」

「え…ってなんですか!?あんた 二週間・ ・ ・も学校来ない上に一切連絡もつかなかったからクラスの皆さんは勿論先輩達も心配してたんですよ!?」


少し待って欲しい。

今彼は何と言った?二週間も学校に来ていなく連絡も無かったと、オレが?それはない。彼とは昨日会っている。しかも学校で顔も合わせていて。その時桜君もまだ居たはずだ。


「にれ君とは昨日も会ってるし、連絡も…」


したはずだ。そう言い返したいのに確信を持てなくて喉に小骨が刺さったような違和感に不快さを覚え言葉が詰まる。最後にした内容はなんだったか。それすらも分からなく焦りと苛立ちが募っていくのが分かる。

また思い出せない。

居心地の悪さを誤魔化すように言葉を続けた。


「連絡もしたはずだよ、桜君だって一緒に居たから、にれ君も可笑しいなこと言うからオレびっくりしちゃったよ。ねえ桜くん」


問いかけるように振り返れば一切反応は見せずどこを見ているか分からない。今ぐらいは反応くれてもいいのになんて思ってしまう。


「ごめんねー、昨日から喧嘩しちゃってて一切反応してくれないの。何言っても無視されちゃうからオレも少し困ってて」

「す、ぉぅ、さん…?」

「なんか恥ずかしいところ見せちゃったね。今回はオレが原因だと思うから大人しく受け入れてるんだけど昨日の今日でここまで拒否されると結構キツいね。分かってはいたけど意外と根に持っちゃうタイプだよね、桜君って」

「さっきから、何を…」


つい喋り過ぎてしまった。にれ君を困らせてしまったかもしれない。少し反省をし謝ろうと彼の方を見れば思わず顔を顰めそうになった。なぜ、どうして。

にれ君店員さんあの人と同じ顔をするんだ。

困惑が滲み出た苦しそうな顔。教えてよ。目を逸らしたくなって自然と顔が下を向いた。理解出来ないものは怖い、それが人間の心理なのだろう。焦る感情とは別に思考は冷静でそのアンバランスさに吐き気がする。

そんなことを思っていると不意に誰かによって視界を覆われる。恐らく手だとは思うが温度は感じない。不思議と抵抗する気もなく口だけを動かす。


「…誰?オレに」

「蘇枋」


反射的に手を跳ね除け前を見る。

桜君だ。どうして今になって、それよりも謝らないと。沢山話して、また前みたいに。嬉しさと困惑で言葉に詰まるが感情のままに喋りかける。


「桜く「悪かったな 」え…?」

「謝ることない、オレが悪かったんだから。あの時」


何を言ってるのか分からない。


「ちゃんと前を見ろよ」

「桜君…!」


どうして。


あの時と同じように肩を押され慌てて手を伸ばす。間に合えと、その一心で。

あと少しで届くというその瞬間激しい頭痛と酷い耳鳴りがした。最初は煩わしい程度のものが不快さを増していき思わず耳を塞ぐ。外の音を遮断したことによって内側から聞こえる心臓の音に圧迫感を感じ収まっていたはずの吐き気を助長させる。思っていたよりも鼓動が早く呼吸が安定していないせいだろうか。

この状態でまともに理解できる訳もなく視界が暗くなっていく。呼吸がちゃんと出来ていないせいで脳まで酸素が行き渡っていないのだろう。辛うじて繋ぎ止めていた意識に限界が来たのか全身の力が抜け地面に叩きつけられる。


そうだった。


痛みで軽く意識が戻るも一瞬だ。

その時に視界の端でにれ君が慌てて駆け寄って来てるのが見えた。オレの名前を叫びながら必死な顔してるのがどうにも申し訳なくて安心させたい気持ちで口を開いた。


オレはもう大丈夫だよ、と。


声が届いたか定かではないが優しさに触れられた気がして薄れていく意識に身を任せた。




暗転​─

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