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玲王くんがはぐらかさないで凪に好意を伝えていたら、、複雑な人間関係がほんと面白いです!
5.なんでもない
「なんでもない」
潔はよく話をはぐらかす癖があった。
何かいいかけていつもやめる。
気になるものの聞かずにいたことが山ほどあった。
「凛、もうここには来ないでよ。お前にとって潔がそれほどだったなら大した事でもないでしょ。」
凪の気持ちには薄々気づいていた。
付き合い出した頃から距離は近かったものの取る仕草や取ろうとする姿勢は取らなかった。
潔のことを好きなのは今も変わらない。
不安だ。忘れられて悔しい。
でも一番悔しいのは自分が嘘をついたこと。
何も変わってない。何も変わらないままだ。
「凛、ちょっと話せるか?」
病院の中庭のベンチに座っていると隣に御影が並んだ。
「…その、悪い。盗み聞きするつもりはなかった。ましてや凪が入って行くなんて…、」
「…何の用だよ。」
御影は決心するかのように目をぎゅっとつむって開けた。
「潔の記憶を戻すのに俺も協力するよ。」
「なんでお前が…」
「ずっと後悔してたんだ。凪の潔に対しての気持ちは知ってたから、」
「お前凪のことが…」
「ずっと前からな。」
御影は引き攣りながら笑って頷いた。
「馬鹿だよな。今までで数回聞かれたんだ。俺のこと好きなの?って。その度にはぐらかしてきた。 」
” なんでもない。気にすんな。 “
玲王の言葉で顔を上げた。
「…俺は、俺は潔が好きだ。忘れるなんて許さねぇ。あいつは誰にも渡さねぇ。今までのことなかったようにはできない。」
俺は立ち上がった。
そして御影を見下ろす。
「御影玲王、お前のやり方は嫌いだ。俺の弱さもな。そんなに好きなら凪に首輪でもつけておけ。潔は…俺の恋人だ。」
「…やっぱり、君は俺と付き合ってたんだね 」
振り向くとそこには懐かしい顔があった。
「潔…ッ!」
嘘をついた弱い自分が知られてしまった。
聞きたいことは山ほどあった。
もしかしたら俺のことを覚えているかも。
「俺は、記憶がないみたいだ。君の。」
いつも大事なところははぐらかす。
大切な事ははっきりと言わない。
でも強くて芯があって、そんな潔が変わってしまった。
淡い期待は少しずつ溶けて行くようだった。
何も言えずにいる俺に潔が一歩近づいた。
「また思い出すから。時間はかかるけど努力はする。好きにはなれなくても友達としてやり直す努力はするから…何かあった?」
「いや、なんでも… 」
はぐらかす癖はいつからついたんだ。
お前が隣に居たせいだ。