4.糸師冴は愛している
無事U20の日本代表選手、冴達との試合に勝ちブルーロックは継続。そして俺達には休みが与えられ、一時帰宅を許された。
「フランス戻んねぇのかよ。」
「日本がこれからどう変わるかをこの目で確かめる。潔世一にも興味があるしな。」
俺が潔の名前を出した途端、凛は口に含んでいた水でむせ、咳き込んだ。
「…ゴホッ。なんでそこで潔が出るんだよ。喧嘩売ってんのか。」
「あの試合に勝てたのはアイツのシュートが決め手だった。アイツさえ居なければ同点で終わっていたのに。」
タオルで口元を拭き終えると黙って部屋を出て行こうとする。
「見ないのか、この前の試合。アーカイブ残ってるし。」
振り向く凛を確認すると俺の横のソファを叩く。
すると凛は渋々ながらも横に座った。
「お前は潔世一が嫌いなんだと思ってた。」
「嫌いだ。いつ好きだなんて言ったんだよ。」
「顔に書いてある。」
俺の冗談を間に受けたように両手で顔を隠す。横顔の鼻から耳にかけてが真っ赤に染まっている。
「お前変だぞ。気持ち悪ぃ。」
「…黙れ。俺も分かんねぇよ、けどこの前から頭の中があのバカでうまってんだよ…ッ‼︎」
いつもよりも断然素直な凛に違和感を覚えるよりも先にあの潔で悩むことがおかしい。
もしかすると本当に潔世一に気があるんじゃないかと考えてしまう。
「お前にもそんな感情あるんだな。」
「何だよ急に。」
隣に座る凛の肩を自分に寄せて顔を寄せる。
「…本当に何だよッ。」
「俺には照れねぇのか。」
一瞬とまどいながら目を合わせるも、すぐに伏せて俺の肩を押す。
「からかってんならやめろ。部屋戻る。」
「凛、やるなら早めに動いとけよ。」
「何でだよ。」
「あいつすぐ持っていかれんぞ。」
ドアノブに手をかける凛はこちらを振り返る素振りは見せずにそのまま扉を開けて行ってしまった。
「はぁ…潔世一なぁ。」
ずっと凛は俺だけのものだと思ってた。
凛が俺に気を持っていたことを知っていた。
あの頃はまだ凛を弄んでた。
俺が振り向くと凛は嬉しそうにこちらを見つめてくる。その表情だけで満足できた。
潔世一は俺の世界に要らない。
俺と凛の世界に必要がない存在なんだ。
サッカーとしてだけじゃなく潔世一という人間に興味が出た。
凛は俺だけに愛されればいい。
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