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「先輩、聞いてます?」
「聞いてる。」
「絶対聞いてないでしょ!」
「聞いてるって。」
そう言いながら、先輩は相変わらずクールな顔で歩いている。
(ほんとに聞いてるのかな…?)
最近、私は先輩の表情のちょっとした変化に気づけるようになった。
例えば、目線を少しそらすときとか、ほんの一瞬だけ言葉に詰まるときとか。
「……先輩?」
「ん。」
「何か考えごとしてました?」
「……別に。」
(またそれ!何回目だ??)
「もう、ほんとに素直じゃないですよね。」
私はちょっとだけ不満そうに言いながら、先輩の顔を覗き込む。
すると、ほんの一瞬だけ、先輩の視線が私に向けられた。
(あれ?なんか…いつもと違う?)
「……なあ。」
「はい?」
「お前、なんで俺の隣にいるんだ?」
その言葉に、私は思わず立ち止まってしまった。
(え…?)
先輩はいつも通りのクールな顔をしているけど、どこか真剣な雰囲気を感じる。
(そんなの、決まってるのに…)
私は軽く笑って答えた。
「だって、先輩のこと好きだからですよ?えーと、彼女?じゃないですか!」
先輩の目が一瞬だけ揺れる。
(あれ?もしかして…今のちょっと効いた?)
「……お前、ほんとそういうことを簡単に言うよな。」
「簡単じゃないですよ?本当ですもん。」
「……。」
先輩は無言のまま、私をじっと見つめる。
(うわ、ちょっとドキドキしてきた…)
さっきまで何気なく話してたのに、急に空気が変わる。
いつも冷静な先輩なのに、今はなんだか少し戸惑ってるように見える。
「……そうか。」
「はい!」
私は笑顔で答えて、また隣に並んで歩き出した。
(私が先輩の隣にいる理由は、ただそれだけ。)
(先輩が好きだから、隣にいたい。ただ、それだけなのに。)
なのに、どうしてこんなにドキドキするんだろう。
そして、どうして先輩も、ちょっとだけ耳が赤いんだろう?
(もしかして…先輩も、少しは意識してくれてる?)
そんな期待を胸に、私は先輩と並んで歩き続けた。