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テイミアはハッとしてわたしから距離をとった。まさか気づかれるとは思わなかったのだろう。そう、テイミア自体が羅針盤なのだ。あの羅針盤には何一つ意思がなく、わたしのいうままにしか行動できなかった。しかし、コイツはどうだ?自律して話せ、ある程度の魔法を使え、何よりも闇の帝王に忠実…羅針盤は持ち主に忠実なのだ。一つ一つの選択肢の中から、より良いもの、最善の選択ができる。コイツは闇の帝王に使える気でいたのだろう。そしてわたしの中にあった本来の意思であるテイミアの魔力と魂を抜き取り、その名を名乗っていた。テイミアが心の中にいて、いつかわたしも消えなければならないとダンブルドアは言っていた。しかし、それはわたしのための嘘。おそらくはこの程度の嘘にびびっていたら、到底わたしは何も成し遂げられない。だから今成し遂げる。コイツの一枚上手を取るために。テイミアは驚いたような表情から一変、微笑みを浮かべ、わたしを見ている。『…キミが気づくとは思わなかった。思ってたより聡明だね?』相手は笑いながら言った。『けど…それを知ったからどうなるという?もはや羅針盤は俺様の手にある。お前がどうなろうと結果は変わらないぞ?』優しい微笑みが嘘だと言わんばかりにゾッとするような顔になった。嘲笑し、わたしの顔をテイミア…いや、ヴォルデモートは貪るように見ていた。『今更俺様の意思に介入しようとは。よく考えたものだな?それともあの狸ジジイに入れ知恵されたか?悪いがあの小僧もお前たち友人とやらも何の意味もなさない。羅針盤はすでに俺様の手の中だ…小童、お前一人が動いても何も変わらない…奴らはすでに俺様の手の中だ…』何も変わらない、ね。仮にわたしがいなくとも、ヴォルデモートはハリー、ハーマイオニー、ロン、みんなが倒してくれる。わたしがいなくてもいい。だから…『わたしも、ここで死ぬわけにはいかないね』ヴォルデモートを見据えてわたしも返した。ヴォルデモートは片眉を上げてわたしをみている。当然だ。この人は友情も、慈愛も、慈悲も、純愛もわからないのだから。わたしは持っていた杖で自分の頬を切った。血がたらりと流れ、痛みを感じた。ああ、やっぱり、ここは精神の世界じゃない。現実だ。わたしは足元にあったソウルカードを拾った。感触がある。ヴォルデモートはまだ笑いながらわたしを見ていた。『ここが現実だと気づいたか!だが、それが何だという?ここから無事に逃げたとて、貴様がダンブルドアから受けた命である羅針盤を手に入れることはとても遂行出来まい。最も俺様は逃がすつもりなどない!』ヴォルデモートは杖を向けて死の呪文を唱えた。わたしは身を屈めてよけ、傍のテーブルを盾にした.杖を握り、ひたすら走った。どこかに出口は…羅針盤を手にしたとして、出口がなければいずれにしても万事休すだ。相手の攻撃を盾の呪文で妨害し、作戦を考えた。……こんなことを思いつくなんて…死ぬかもしれないが、やらないで死んでたまるか。わたしは盾の呪文を出しながら、必死でソウルカードをめくった。
一枚だけ、おかしい。
本来ならハートやスペードのマークだがこれだけ緑を帯びた黒なんて見たことない。
ヴォルデモートに振り返ると、驚いた顔をしていた。わたしたちは、一瞬だけ見つめあった。そして、ビリリ!とカードを破った。すると、耳をつんざくような悲鳴と、目の眩むような光がわたしの五感を襲った。と、同時にわたしの意識も闇の底に落ちていった。
下に………下に………