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それじゃあ悪いから私がソファーで眠ると言ったのだけど、女の人をソファーで寝かせて自分がベッドで寝るなんて出来ないからそれは却下と言われ、更には今日泊まるホテルのソファーは大きくて疲れる事もないから問題無い、気にしないでと彼に押し切られる形で私と凜がベッドを使わせて貰う事に決まった。
実際この部屋を見て、竜之介くんの言っていた意味が良く分かる。
この部屋のソファーは何人掛けなのだろうと思う程大きく、ソファーで眠ったとしても普通のベッドと同じくらい寝心地が良さそうだから。
「飯はどうする? ルームサービス頼んでゆっくり部屋で食べようか? レストランもあるけど、凜が飽きて騒いだりしたらゆっくり出来ないだろうし」
「あ、うん、そうだね。部屋で食べる方が良いかも」
高級ホテルのレストランなんてとんでもない金額の料理ばかりな気がするのと、子連れで行くような場所ではない気がした私はルームサービスを頼む事に頷いたのだけど、
「亜子さん、どれにする? 凜はこのお子様プレートでいいか。おもちゃも付いてるし」
ルームサービスのメニューを見ていた竜之介くんに言われて覗き込んでみると、こちらもなかなかの値段が付いていて思わず二度見した。
(た、高い……。やっぱり竜之介くんはこういう高いホテルに泊まったり、値段の高い料理を食べたりなんて、普通の事……なんだろうな……)
御曹司の彼とは住む世界が違うと思っていたけど、こういう些細なところでさえも違いを思い知らされる。
「亜子さん?」
「え?」
「どうかした?」
「あ、いや、ちょっとボーッとしてただけ」
「朝から動きっぱなしだったから、疲れた?」
「う、うん、そうかも」
「お風呂のお湯張るから、夕飯の前にゆっくり入るといい。凜は後で俺と入ればいいし」
「え? いや、でも……竜之介くんだって疲れてるでしょ? 凜は私が入れるから……」
「俺は平気だから。凜、風呂は後で俺と入ろうな?」
「うん!」
「凜も俺と入るって言ってるし、亜子さんは一人でゆっくり入りなよ、ね?」
「……ありがとう、それじゃあ、お言葉に甘えてそうさせてもらうね」
結局竜之介くんの厚意に甘えまくりの私。
お風呂に入っている間に料理を注文しておくと言われ、値段が気になって決められなかった私は彼にお任せしたのだけど、いざお風呂から上がると、テーブルに並べられた夕食を見た私は驚き、思わず声を上げた。
「あれ? これって……」
「ああ、一樹に頼んで買って来て貰ったんだ」
だって、並んでいたのは大手チェーン店のお弁当だったから。
「亜子さん、料理の値段気にしてるみたいだったから、これなら気にせずに食べれるかなって」
「竜之介くん……」
しかも、私が値段を気にしていた事に気付いていて、気兼ねなく食べれるようにとの計らいだと知って驚くばかり。
(本当、竜之介くんには隠し事出来ないなぁ……)
気を遣わせてばかりで申し訳ない気持ちになるけど、彼の気遣いは本当に嬉しい。
「俺としては値段なんて気にして欲しくはないけど、一番は楽しく食べる事だから今回は弁当にしたんだ」
「ママー、おなかすいた!」
「ほら亜子さん、食べよう」
「うん」
価値観の違いがあって驚きや戸惑いも多いだろうけど、気遣ってくれる竜之介くんとならやっていける。
そして、私も少しずつだけど彼に合わせられるようになれたらいいなと思いながら、私たちは楽しい夕食の時間を過ごす事が出来た。